アフナ・エザコンワ 国連開発計画(UNDP)アフリカ地域局長
アフリカが握る気候変動対策への鍵
2022年11月11日
11月6日から18日までエジプトで開催される国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)は、「アフリカ COP」と呼ばれています。この重要な国際会議では、大陸がどのような気候の緊急事態を抱えているか、アフリカ諸国とグローバル・パートナーがどのように対応しているかに焦点が当てられています。UNDPアフリカ局長のアフナ・エザコンワに、COP27の重要な論点と期待される成果について質問しました。
アフリカは、気候変動の影響を最も受ける地域のひとつです。世界が何も行動を起こさない場合、今後数年間でどのような影響が予想されますか?
アントニオ・グテーレス国連事務総長は最近、この世界的な現象を「気候破壊 (climate destruction)」と表現しています。そして、アフリカが不釣り合いなほど影響を受けていることは周知の事実です。サヘルとアフリカの角では、過去40年以上で最も長い干ばつが発生しており、アフリカの角での干ばつのサイクルは、数十年前の12年ごとから5年未満に短縮され、影響を受けたコミュニティの回復は極めて困難な状況です。
アフリカ諸国は、気候変動がもたらす実存的な脅威を認識し、すでにその対策に取り組んでいます。
例えば、アフリカ諸国の政府は、気候変動に対するNDC(国が決定する貢献)を実施するために、2640億米ドルの国家財源をプレッジしました。
大陸全体の再生可能エネルギーへの公共投資は、2000年から2009年の40億ドルから、2010年から2022年の間に550億ドルに増加しているという最近の分析結果があります。しかし、これは2020年から2030年の間に必要とされる2兆8,000億ドルの10%にしか過ぎません。
これは賞賛に値することですが、気候変動と戦うためにアフリカ諸国が毎年投資しなければならない500億ドルにはまだ及びません。このため、世界はアフリカとともに、この地球規模の大災害に対処するために必要なレベルの資金を調達する必要があるのです。
「アフリカ諸国は、気候変動がもたらす実存的な脅威を認識し、すでにその対策に取り組んでいます。」 」
例えば、アフリカ諸国の政府は、気候変動に対するNDC(国が決定する貢献)を実施するために、2640億米ドルの国家財源をプレッジしました。
大陸全体の再生可能エネルギーへの公共投資は、2000年から2009年の40億ドルから、2010年から2022年の間に550億ドルに増加しているという最近の分析結果があります。しかし、これは2020年から2030年の間に必要とされる2兆8,000億ドルの10%にしか過ぎません。
これは賞賛に値することですが、気候変動と戦うためにアフリカ諸国が毎年投資しなければならない500億ドルにはまだ及びません。このため、世界はアフリカとともに、この地球規模の大災害に対処するために必要なレベルの資金を調達する必要があるのです。
早急かつ適切な対策を講じないと、農村部に住み、増加する水ストレス、乾燥地や砂漠の拡大、海面上昇などに脅かされ、気候に左右される生活を送るアフリカの14億人のうち60%を占める人々に影響が及ぶだけではありません。海洋酸性化と気温の上昇は、アフリカの海洋依存型経済、特に小島嶼開発途上国の経済に悪影響を及ぼします。
こうした変化は、食糧安全保障を揺るがし、公正なエネルギー移行を損ない、アフリカ全域で数百万人を貧困線以下に押しやることになるでしょう。それはまた、世界の経済成長を損ない、大量の強制移住を引き起こし、世界の安全保障を危うくする可能性を孕んでいます。
もし私たちが行動を起こさなければ、私たちが直面するシナリオは非常に厳しいものになると考えます。
気候変動による緊急事態の最前線にある多くのアフリカ諸国は、脆弱性や紛争にも悩まされています。このことは何を意味し、どのような解決策があるのでしょうか。
脆弱な地域や紛争の影響を受けている地域に住む人々は、気候変動の影響を受ける最前線に立たされていることが多いにも関わらず、早期警報システムに必要不可欠な気候・環境データやサービスの喪失や欠如、主要インフラや経済基盤の喪失により、衝撃やストレスに対処する能力が一層制限されています。さらに、気候変動の影響により、限られた天然資源をめぐる競争が激化しています。このような状況は、暴力的過激主義を生み出す土壌となり、その結果、資源を動員する障壁が大きくなるなど、さまざまな問題が生じています。
問題は複合的に発生し続けるため、早期警戒システムの強化が必要です。例えば、UNDPはアフリカ連合やサヘル地域諸国と協力して、災害リスク軽減と管理の取り組みを強化しており、アフリカ連合が最近設立した「アフリカ・マルチハザード早期警戒・早期行動システム」はその一例です。
このような状況に対処すべく、気候変動の根本原因に取り組みつつ、開発を加速し、平和の配当を提供できる解決策への投資を増やすことが求められています。しかし、私たちはもっと多くのことを行う必要があります。ですので、UNDPは安定化プログラムにも投資しています。サヘルにおける「A Regeneration(再生)」と名づけられた特徴的なプログラムに基づいて、UNDPは生計を維持するための基礎インフラを提供し、特にチャド湖流域とリプタコ・グルマ地域において、主要なアクターである若者とともに再生可能エネルギープログラムに投資しています。
再生可能なエネルギー源を豊富に持つアフリカでは、2030年までにエネルギー需要の4分の1近くを地元のクリーンな再生可能エネルギーで賄うことができると考えられています。UNDPは、クリーンエネルギーへのアクセスを拡大するためにどのような支援を行っていますか?
アフリカの広大な土地、太陽光、鉱物資源は、大陸の工業化の原動力にもなり得る再生可能エネルギー革命を推進する上で極めて重要です。UNDPの「アフリカにおける新たな戦略的提案」が、持続可能で安価な再生可能エネルギーをUNDPのアフリカにおける投資の主要な柱として挙げているのは、このためです。
「これを機会と捉え、政府や民間セクターと協力し、UNDPの戦略計画に沿って、アフリカでいまだ電気を待っている6億人以上の人々が再生可能エネルギーにアクセスできるようにしていきたい。」
私たちのアプローチは、料金の引き下げやサービスの拡充によってエンド・ユーザーに裨益する革新的なビジネスモデルの財政的な実現可能性を高め、民間投資拡大を促進するものです。
アフリカ諸国は、2030年までに気候変動に関する公約を実施するために、巨額の資金援助が必要であることを表明しています。なぜ、このような国際的な支援が必要なのでしょうか?
アフリカ諸国は、自分たちが最たる原因ではない世界的な気候危機のために、重い代償を払っています。世界の温室効果ガス排出量の僅か4%を占めるアフリカが、気候変動に取り組むために国民に負債を負わなければならないのは、不合理なことです。アントニオ・グテーレス国連事務総長が最近、「汚染者が支払わなければならない」と強調したのは、このためです。
アフリカの気候目標について結果を出すには、新型コロナウイルス(COVID-19)の大流行とウクライナでの戦争の影響によって社会経済がショックをうける中、先進国が条約の下での既存の義務を継続するために緩和と適応の両方に関して途上国を支援するための資金源を提供しなければならないと規定するパリ協定の第9条の履行に向けてより強力なギアを入れる必要があります。
炭素市場はより公正な基準で運営される必要があります。排出削減プロジェクトから生まれた許可証やクレジットを購入することで、排出企業はアフリカでのネットゼロ移行に必要な資金を調達することができます。
「世界第2位の面積を誇るコンゴ盆地の熱帯雨林をはじめ、最大規模の森林資源を有する一方で、これらの資源を所有するアフリカのコミュニティは、自然保護の恩恵を受けられないまま。」
アフリカは世界の炭素市場での取引の2%しか占めておらず、京都議定書の下でクリーン開発メカニズムの資金の大部分を受け取っているのは、南アフリカと北アフリカのみです。このため、COP27で信頼できる炭素市場規制を卓上に乗せることが重要です。
アフリカのためのCOP27に期待する他の成果は何ですか?
並外れた天然資源を持つアフリカは、多くの地球規模の気候変動対策とより環境に優しい経済への移行の鍵を握っています。今回のCOPは、アフリカで開催されることから、何が公正なエネルギー移行を構成するかについて、コンセンサスを得る場となる必要があります。資金調達は目的達成の要であり、以下のような手段を通じて講じる必要があります。
- COP26 で先進国が途上国への 1,000 億ドルの気候変動資金の約束を再確認し、適応資金を 400 億ドルに倍増する約束をしたように、気候変動資金の増加と透明性を高めること
- 炭素資源を豊富に持つ開発途上国にも有効な、より明確なルールによる公正な炭素市場。ほとんどのアフリカ諸国は、炭素取引に関する規制や政策環境を強化し、炭素資源をより適切に定量化するための支援が必要
- 影響を受けた地域社会に対する損失と損害、気候変動への賠償への注目の高まり。COP26は、この分野での更なるコミットメントへの扉を開いたが、気候変動の影響により破壊されたコミュニティは、回復し、異なる方法で、より良く前進するために、今すぐ行動を起こすことが必要