震えと緊迫:4年に及ぶ内紛の苦痛にのしかかるミャンマー地震

2025年4月14日
Collapsed building debris with a crane, workers, and construction site in the background.
Photo: UNDP Myanmar/Su Sandi Htein Win

マグニチュード7.7のミャンマーで起きた地震後に、同国サガインとマンダレーで目の当たりにした光景は想像を絶していました。

高層ビルや何百もの家屋が瓦礫の中に横たわっています。まだ建っている建物の多くは危険な角度で傾いており、現在は重力に逆らっていますが、いまにも倒壊しそうです。サガインでは、建物の80%が破壊され、イラワジ川にかかる主要な橋の一つにおいては、すべての部分が子供の壊れたおもちゃのように折れ、水の中に沈んでいます。道路には車を飲み込むほどの深い亀裂が入ってます。

40℃にも達する気温の中、どこを見ても人々がが路上で暮らしているのが見えます。たとえ家がまだ建っていたとしても、彼らはそこに入ることを躊躇います。

災害には常に病が付きまとい、そしてサガインやマンダレーでは、多くの人々が空き地などで排泄することを余儀なくされ、清潔な水は不足しています。コレラ、肝炎、腸チフスの報告は、援助関係者の間でさえ表面化してきています。現在も続いている内戦のためすでに人手不足な病院は圧迫されており、外傷用キットや消毒薬などの重要な医薬品が緊急に必要となっています。建物は安全ではなく、患者は駐車場に収容されています。

地元の市場はほとんど閉鎖され、使用可能な道路や橋に依存する交通網は深刻な影響を受けています。食料があったとしても価格が高騰しており、雇用や収入も途絶えているため、多くの人々は食料を買うことすらできません。

人的被害は甚大であり、さらに悪化する可能性が高いです。1週間が経過し、生存者を発見できる可能性が急速に低下する中、焦点は救助から復旧へとシフトしてきています。現在約3,000人となっている死者数は、今後大幅に増えることが予想されます。

この惨事は、すでに紛争と避難生活で苦しんでいた国と人々にとって、非常に破壊的で、深刻な危機です。コロナ禍、昨年の台風、そして長年にわたる紛争のショックからいまだに立ち直れないミャンマーの荒廃した経済は、ハイパーインフレ、高失業率、そして特に子どもたちの間で深刻な貧困を生み出しています。貧困層や社会的弱者は、もうこれ以上落ちることはないほどです。

UNDPの報告書によると、人口の75%または4,000万人以上の人々が最低生活水準に近いか、それを大きく下回る生活をしてます。ミャンマーの中産階級は、驚くべきことに近年50%も減少しました。生活に必要なものでさえ、ほとんどの人にとっては手に入らない贅沢品なのです。そして、サガイン地域だけで130万人以上が国内避難民となって、紛争を逃れて避難していますが、生活を支える手段はほとんどなく、避難先でも完全に安全とは言えません。

Herd of sheep grazing near a riverbank with a bridge in the background.

サガインでは、イラワジ川にかかる主要な橋のひとつを含め、建物の80%が破壊されました。

Photo: UNDP Myanmar/Su Sandi Htein Win

既存の深刻な脆弱性に追い打ちをかける今回の大規模な災害は、国際社会による大規模かつ継続的な対応を必要とします。

すべての緊急事態と同様に、最初の数週間から1か月の間に、保健、水と衛生、食料、そして避難所の緊急のニーズに対応しなければなりません。しかし、今回の危機では、多くの被災者が都市部や、小規模であっても農業が行われていた地域に住んでいました。つまり、緊急支援から経済的・社会的サービスの支援および復旧への迅速な移行が重要とされる地域です。したがって、医薬品や医療物資の提供は、その後迅速に病院や診療所の機能回復へとつなげられる必要があります。水の配給も、即座に水供給インフラの修復へと移行しなければなりません。一般的な食料配給は、対象を絞った補助的な栄養支援や、雇用、所得、そして、市場機能の回復へと移行する必要があります。一時的な避難所は、住宅の修復へと置き換えられるべきです。

何よりも重要なのは、人々の尊厳と主体性が守られることです一永続的な支援よりも、自立への手助けのほうが遥かに望ましいのです。

UNDPが行う活動の重点は2つ、差し迫った基本的ニーズへの対応と、将来を見据えた支援です。インフラが大きく損傷している中でも、UNDPのチームは約50万人に対して、シェルター資材、清潔な水、ソーラーキットの配布を行っています。また、貧困層には「キャッシュ・フォー・ワーク(現金支給による就労支援)」を提供し、民間セクターと連携して、瓦礫を撤去し、再利用可能なものはリサイクルするよう取り組んでいます。

アスベストなどの有害物質を適切な保護なしで扱っている作業員に、必要な機材や専門知識を提供しています。仮設シェルターの提供、被害を受けた住宅の評価、そして地元の職人の方々と連携して修復作業を行っています。

さらに、UNDPはより長期的な基盤作りにも取り組んでいます―小規模ビジネスの再開、公共サービスインフラの修復、そして膨大な復興作業に必要となる職を得られるよう、若者への職業訓練を実施しています。

私がサガインやマンダレーを歩いたときに目についたのは、かつて金色に輝いていた古代のパゴダ(仏塔)や仏像が、瓦礫の中に埋もれてしまっていたことです。少し前までは、堂々と立ち、国を覆う混乱から切り離された存在のように見えていました。それらは、離欲と慈悲の象徴でした。仏教の重要な教えの一つは、「人生は苦しみ(ドゥッカ)に結びついている」というものです。しかし、ミャンマーの人々は、これ以上どれほどの苦しみに耐えられるのでしょうか?そして、その苦しみの中にある人々が、どれほど長く、普通の人々や懸命に支援を続ける第一線の支援者たちの慈悲に頼ることができるのでしょうか?仏塔や仏像と同じように、ミャンマーの人々のレジリエンス(強靭性)は、当然あるものと考えてはなりません。彼らは、この複合的な危機に対処するために、国際社会の支援を切実に必要としています。現在、世界の注目はミャンマーに向けられていますが、その視線はすぐに他へ移るかもしれません。しかし、ミャンマーの難局がこれ以上見捨てられものであり続けないことを願います。

国際社会は、ミャンマーとその人々の決意と勇気に応えるべく団結し、より良い未来を共に描かなければなりません。少なくとも災害が再び起きた際、その打撃が深くならないよう備えることはできるはずです。

復興への長い道のみちのりにおいては、インフラの再建、生計手段の回復、そして脆弱な立場にある人々のニーズに応えるための協力が必要となります。国際社会からの注目と継続的な関与は、ミャンマーの人々がこの壊滅的な時期を乗り越える手助けとして不可欠なものになるでしょう。

UNDPによるミャンマー地震への対応、そして他の危機的状況下での活動は、通常(コア)資金拠出国のパートナーの皆様の支援によって可能となっています。