新しいウイルスに対応するための新しいアプローチ

2020年3月27日

多くの病院が、食事、薬や他の物資の配送、病院とその他の公共エリアの消毒、患者の体温測定、問い合わせへの対応等にロボットを活用しています。 Photo: UNDP China

新型コロナウイルスは、公衆衛生から情報システムに至るまで、様々な分野における中国の災害への備えと対応に試練を与えています。しかし、中国はこの戦いにおいて、重要な強み、テクノロジーとインフラを持っています。テクノロジーは、何百万人もの人々にとって隔離期間の生活をより住みやすい環境にするだけでなく、ウイルスとの戦いにも貢献しています。

中国は新型コロナウイルスのゲノム配列を明らかにしました。配列情報のオンラインでの投稿により、この発見は世界中の研究機関に波及し、コピーを作成するための合成サンプルの注文が急増しました。これにより新しい治療法を試すことが可能になり、そして失敗した実験でさえも研究者がより着目すべき事象に導く重要な手がかりを提供することに繋がっています。

ドローンは、全国各地のアウトブレイクに対応するために配置されています。住民にマスクを着用するよう警告するスピーカーを備えて行うパトロール、またドライバーが携帯電話でスキャンして健康情報を登録できるQRコード付きプラカードをつけての巡回などに活用されています。ドローンの活用により、関係当局は安全な距離を保ちながら情報をより迅速に入手できます。農業用ドローンは遠隔地に除菌剤を散布しており、また、重要な医薬品を供給するためにも同様にドローンが使用されています。

食品のデリバリー

スマートフォンは、ウイルスの感染リスクを減らす上で重要な役割を果たしています。配達アプリは、ドライバーが、注文者の自宅ではなく特定の地点に配達を行うという、直接接触を介さない配達を可能にしました。食品には調理と配達に関わるすべての人の体温を記録したカードが付属されています。また、確認済みの発症者がいる住宅地のコミュニティと、そこまでの距離を示すユーザーマップを提供しています。モバイル決済アプリは、最大17日間ウイルスを媒介するとされる紙幣からの感染を減らすことに貢献しています。

新型コロナウイルスが世界中でニュースの見出しを飾り始めたとき、同時に虚偽の情報も広がり、この事態はWHOによって「情報伝染病(infordemic)」と名付けられました。しかし、テクノロジーは誤った情報を拡散する一方で、それを抑制するのにも役立ちます。中国では、専門家、大学、諸機関(UNDPを含む)、有名人、さらにはA.I.アナウンサーなど、「情報伝染病」に対する大規模なオンラインでのキャンペーンが行われ、「ウイルスではなく言葉を広める」よう促しています。例えば、このキャンペーンではマスクの正しい着用方法を伝え、若者がそれらの情報を高齢者と共有し、社会的隔離(social distancing)を実行するように奨励しました。

遠隔勤務

こうした状況で直面する課題は、遠隔勤務です。いくつかのテクノロジー企業が無料のオンライン共同作業ツールを提供しています。他の企業では素早く在宅勤務を採用し、オンライン会議ソフトウェア、共同作業プラットフォーム、LBSテクノロジーを導入して従業員の在宅出勤を可能にしています。 UNDPでも、Zoomによる電話会議や企業業務計画プラットフォームの導入により、在宅で勤務を続けることができました。

学校が既に数週間閉鎖されている状況では、おそらく両親にとって最大の課題は子供たちに学習を継続させることです。これを可能にするために、多くの中国の学校ではオンライン学習プラットフォームを展開し、教師は自宅から講義をライブストリーミングしています。また、高血圧から関節炎まで、感染症以外にも多くの持病を抱えた人々がいます。しかし皆病院に行くことを避けるため、オンライン診察や薬の速達便が増加しています。多くの機関で、社会的隔離のストレスに対処するために、無料のオンライン心理カウンセリングサービスを提供しています。

ロボットによる配達

看護ロボットは、新型コロナウイルス対策に中国がロボットを活用している一例です。

ロボットは多くの病院で食品、医薬品、その他の物資の配送に使用されています。病院やその他の公共エリアを除菌して、患者の体温をチェックし、一般的な質問にも答えます。コロナウイルスはAIを使用して診断されており、AIは96%の精度で20秒の間に数千のCTスキャンを読み取ることができます。

強制隔離は世界の20%近くの人々の日常生活を混乱させ、社会的な交流の機会を奪っています。これにより、数百万人もの人々がオンラインでコミュニケーションをとっています。家族は遠方の都市にいる親戚と一緒に食事をし、カメラ越しに乾杯します。結婚式でさえもバーチャルリアリティーで開催されています。

透明性のあるアクセス可能な公開データは、ウイルス拡散を追跡するダッシュボードの構築に役立ちました。これらのダッシュボードは、WHOなどの国連機関だけでなく、より小規模な組織によっても作成され、ユーザーがリアルタイム情報を簡単に入手することは可能にしています。

またテクノロジー活用によって提示される課題もあり、これによりプライバシーと公共の利益についての議論が促進されました。しかし新型コロナウイルスとの戦いにおいては、多くの人々に治療、情報、支援、食事、教育、安全性の向上を提供する上で、テクノロジーが重要な役割を果たしています。