誰も置き去りにせず私たち全員が安全な状態になるまで、私たちの誰も安全ではない
より良く備え、闘い、力強く復興する
2020年4月1日
私はいつも楽天家でした。それでも私が生まれた大陸で新型コロナウイルス(COVID-19)が広がることを考えると、楽観的ではいられません。アフリカは間違いなく地球上の他のどの地域よりも大きな打撃を受け、まさしく長く継続的に破壊的な影響が出るでしょう。現時点では、わずかなアフリカの国だけが発症例を出していません。しかし、すでにいくつかの国で死亡例が報告されており、想定シナリオは恐ろしいものになっています。
新型コロナウイルスはすでに経済的にも大きな打撃を与えています。アフリカの生命線である貿易は急激に縮小し、アフリカ経済委員会(ECA)によると2020年だけでも石油輸出国は最大1,000億米ドルの損失に直面する予想です。また、国連貿易開発会議(UNCTAD)によれば海外直接投資からの予想収益は下方修正され、世界全体で15%の縮小が見込まれています。さらに、アフリカのGDPは3.2%から約2%に縮小する見込みです(ECA)。大陸は危機に対処するための資源を必死に探しているため、新たな債務危機の恐怖が高まっています。パンデミックが先進国経済を停止させているため、アフリカ出身のディアスポラからの送金も急落するでしょう。
しかし、このようなひどいマクロ予測はアフリカ各地の現実の世帯や個人間に存在する人々の苦しみと比較すると危機的ではないのです。保育制度が利用できなくなり、学校が閉鎖されることで、女性は最も大きな影響をうけます。また国境が閉鎖され、中小企業の経営者や非公式な貿易業者が危機に瀕します。礼拝所が閉鎖され、不安や心理社会的不快感が高まっています。アフリカは、インフラや資源に最低限のバッファーがないまま、世界的なロックダウンの流れに急速に追いつこうとしています。
私はアフリカにおける新型コロナウイルス蔓延を2つの包括的な理由から深く危惧しています。まず、急所である医療セクターが非常に弱い点です。第二に、このパンデミックの多次元感染経路は、抜本的な対策を講じなければ、何十年にもわたる開発による進歩を逆転し、極度の貧困を永続させ、未知の悲惨な状況を引き起こしかねないということです。
新型コロナウイルスのアフリカでの蔓延を考えるうえで少なくとも4パターンの分類があります。ウイルスの発症例が確認されていない国、緩和を重視してその蔓延を抑えようとしている国、ウイルスを抑えることができない国、そして、すでに紛争によって非常に脆弱であり新型コロナウイルスがもう1つの循環的な大悲劇となりうる国です。
アフリカがより良く備え、闘い、力強く復興する方法
新型コロナウイルスが世界で最も能力の低い医療システムがあるアフリカに上陸したら、パンデミックに完全に対処することはできません。一部の先進国であっても、治療が困難であるという現状は、アフリカにおける課題の多さを強調しています:集中治療室、検査キット、病床数、マスク・手袋・消毒剤などの個人用防護具、および人工呼吸器などの救急医療が不足しています。アフリカの生産能力は十分ではないため、これらの製品は外部から調達する必要があります。それゆえに物事はさらに複雑になります。
グローバルな物流拠点は、すでに閉鎖されたか、間もなく閉鎖されるでしょう。工場の閉鎖や、生産能力と在庫の多い国々によって課された輸出禁止により、サプライチェーンは倒壊しています。供給可能になった場合でも、国境が封鎖されているため国内の数少ない医療従事者が、医療物資を管理する能力を持っているかどうかも疑問であり、この問題は重要であるもののあまり議論に上がっていないのが現状です。
感染数を抑えるためには、手洗いや社会的距離をとることなどの予防策と緩和策を優先する必要があります。しかし、いくつかの緩和策の有効性は、アフリカでの社会的、文化的、および宗教的慣行の影響を受けます。エボラ出血熱は、文化的慣行がコミュニティ内での拡大を加速する可能性を教えてくれました。また、これらの教訓を活用することで、感染症の撲滅に重要な役割を果たすことができることもわかりました。
エボラ出血熱によって影響を受けた地域は、人々を隔離し、病人の治療をし、愛する人を埋葬するための革新的な方法を見つけざるを得なくなりました。耳を傾けること、信頼することが成功の2つの要因でした。新型コロナウイルスは、国家と社会の間の社会契約を新しくするさらなる機会となります。現在いくつかの国で法令により執行されている社会的距離をとることは、命を救うために新たに受け入れられる慣習になるでしょう。
私たちは革新的なデジタルテクノロジーを介してスマートフォンを持つ大勢のアフリカ人に対して広くメッセージを送る必要があります。 国連開発計画(UNDP)、国際連合児童基金(UNICEF)、世界保健機関(WHO)、およびWhatsApp社による直近のイニシアチブの結果、WhatsApp新型コロナウイルス情報ハブを立ち上げました。
コミュニティが石鹸や水などの基本的資源にアクセスできるように支援することが、私たちの対策計画の中心となります。しかし、きれいな水を手に入れればそれを飲もうとするので、一部のコミュニティは手洗いに焦点を当てられないかもしれません。新型コロナウイルスのパンデミックは多くの場所できれいな水へのアクセスが不足していることに対処するための努力促進につながるはずです。
混雑した収容施設も感染のホットスポットになる可能性があります。政府は人権の観点からこれに取り組み、囚人を適切に保護できるようにする必要があります。また、アフリカの1,000万人を超える国内避難民についても懸念が残っています。それらを保護する方策を見つける必要があります。
新型コロナウイルスにあらゆる次元で闘う
世界的な不況の恐怖が高まる中、脆弱な環境下で生きる人々は食料供給、避難所、そして生計手段について不安を抱えています。多くの人々がインフォーマルセクターでの日給で生活をしています。先進国が労働者のために提唱した救済策はアフリカの社会構造での導入は非常に困難です。アフリカの国々はまだ社会保護のための措置 (世界銀行, PDF) を講じている最中だからです。私たちはアフリカでセーフティネットを構築する方法、つまり生活、人々、私たちが共有する地球を守る方法を見つけなければなりません。
都市封鎖による主要な影響は、重要な公的サービスを提供できなくなる可能性があることでししょう。いくつかの法令では、全員が家にとどまり、可能な場合は在宅勤務をするよう求めています。デジタルインフラへのアクセスを前提とした対策であり、アフリカでもインターネット普及が進んだおかげで、ある程度対応できると考えられます。しかし、政府機能を継続的に保つことができる水準には達していません。また、体系的な電力/エネルギー供給が不足しているため、デジタル技術を活用した労働の実行にも制限があるでしょう。さらに、すべての主要な公的サービスがデジタル化されているわけではありません。
重要なサービスを維持するには、この危機が社会的および内乱を引き起こさないようにするために特に社会サービスシステムにおけるリモートワークを可能にするよう迅速に投資し、政府を支援する必要があります。
資金調達とパートナーシップは不可欠
アフリカの政府は、新型コロナウイルスに対してより良く備え、闘い、力強く復興するために資金を必要としています。
私が総裁補兼アフリカ局長を務めるUNDPでは、国連機関、民間部門、その他のパートナーと協力して、アフリカの政府やコミュニティが保護具、換気装置、検査キットなどの重要な設備を調達できるよう支援すると同時に、緩和策と重要な政府機能の継続、国レベルでの能力強化を促進します。
支援財源が充当可能になったときには、借款ではなく貸与の形態を取り、債務危機の瀬戸際にあると最近評価された大陸に追加の債務負担を課さないようにする必要があります。このような危機的状況からは誰も利益を得るべきではないでしょう。
アフリカのビジネスは、家庭や政府に重要な物資を届ける上で重要な役割を果たすことができます。今こそ、イノベーションと慈善活動を通じて、利益のためではなく、人々のために行動するときです。 10分間で判定のでる新型コロナウイルス検査キットの開発に協力しているセネガルのイノベーターの物語は、アフリカの潜在的可能性を示しています。アフリカのイノベーターはその道を先導することができますし、そうすべきです。アフリカの慈善活動家は、対策と復興を支援することにより市場に資金を投入すべきです。
アフリカは、重要な医薬品や医療機器の生産を優先的に行うべきです。この前例のない調達の動きは、市場の有効性を裏付けています。
アフリカは、アフリカ連合(AU)によるアフリカ産業開発の加速化(AIDA)の計画やアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の条約などの実施を早めることなどを通して、持続可能性に投資すべきです。新型コロナウイルス治療の中心となる主要な関税品目の優先順位付けは、7月1日の取引開始に向けてAUのメンバーが得られる成果の一つです。
新型コロナウイルス戦略の展開におけるAU疾病管理センター(AU-CDC)の取り組みを称賛します。G20を含むすべてのパートナーによって支援されるべきです。UNDPはAU-CDCと協力して実行支援したいと考えています。
アヒム・シュタイナーUNDP総裁は、私たちの機関の資源は新型コロナウイルスとの闘いに完全に集中させていることを表明し、政府、コミュニティ、地域機関と緊密に連携して、医療システムをや経済を強化し、生計を保証するために対策を講じていると強調しています。アントニオ・グテーレス国連事務総長による緊急の世界的停戦命令の要請は、特にアフリカに関係しています。曲がるだけでなく「曲線を破る」ことと、あらゆる場所でこのウイルスを倒すことが必須なのです。
誰も置き去りにせず私たち全員が安全な状態になるまで、私たちの誰も安全ではありません。これは既に新型コロナウイルスのパンデミックの主要な教訓の1つなのです。そして、これからの難題は前例のないものですが、ネルソンマンデラの言葉に希望を持つべきです: 「達成するまでは、それは不可能に思える」。