テーマ:「持続可能な明日に向けて、ジェンダー平等をいま」
国際女性デー(2022年3月8日)に関する声明
2022年3月8日
紛争によって何百万人ものウクライナ人が避難を余儀なくされ、世界がウクライナの途方もない苦悩の終わりを望んでいます。この状況は、すべてのウクライナ人の安全を脅かし、世界の他の地域で起きている紛争と同様に、特に難民やその他の家を追われた女性と女児が、性的およびジェンダーに基づく暴力の危険にさらされています。 先日、国連開発計画(UNDP)は、国連システムによるウクライナ対応に加わりました。ウクライナ国内、及び難民を受け入れている近隣諸国の両方で、紛争の影響を受けている人々を支援していきます。 アフガニスタン、サヘル、ミャンマーやイエメンを含む他の危機や紛争での状況と同様に、ウクライナにおいても、和平調停、紛争予防、平和構築の取り組みにおいて持続的な解決策を見つける上では、女性が平等かつ有意義な形で最初から最後まで加わることが極めて重要です。
このアプローチは、今年の国連女性の地位委員会のテーマである「気候変動と環境悪化への取り組み、そして災害リスクの軽減」を強化する上でも当てはまります。女性は気候・環境分野で重要な役割を担っており、最前線の自然資源管理戦略を担っていることが多いです。そのため、女性は効果的で持続可能な解決策を特定し、実行するのに適した立場にあります。しかし、環境の悪化と希少資源をめぐる競争の激化により、ジェンダーに基づく暴力のリスクが悪化し、また先住民族の女性などの女性の環境人権擁護者が、脅迫や暴力に直面することがあります。UNDPとピッツバーグ大学の「行政におけるジェンダー平等に関するグローバルレポート」によると、気候・環境危機の打撃の度合いは女性に偏りがあるにもかかわらず、環境保護と気候変動対策において女性が最高レベルの指導的立場に就こうとすると「ガラスの天井」があるのです。例えば、環境保護担当の省庁における女性比率は世界平均で33%であり、重要な問題に対する意思決定の場において男女が平等であることは非常に稀です。
しかし、変化を起こすことは可能です。UNDPが推進する「気候の約束(Climate Promise)」という取り組みでは、120の国において、自国が決定する貢献(NDC: Nationally Determined Contribution)と呼ばれる気候変動対策への目標策定を後押ししています。NDCは、持続可能な開発だけでなく、ジェンダー平等を推進するための重要な手段です。世界では11万人以上がNDCのステークホルダー協議に参加し、多くの場合、女性がそのプロセスを主導しています。「気候の約束」下で支援された第二段階のNDCの96%がジェンダーに触れているのに対し、第一段階のNDCでは48%に留まっていました。 また、UNDPと連携機関のコンソーシアムが共同で主導する「気候正義のためのフェミニスト的行動アクション連合(Feminist Action for Climate Justice Action Coalition)」があります。これは、今後5年間にわたり、気候正義とジェンダーの平等に関する進歩を加速させることを目的としています。私たちは、より意欲的なジェンダー対応型の環境・気候アジェンダを推進するために、このような取り組みを積み重ねる必要があります。特に、女性特有のニーズや視点を考慮し、女性の参加とリーダーシップを積極的に促進する必要があります。 また、気候変動や環境に関する金融メカニズムを女性のためにもなるものにしなければなりません。この変化を推し進めることで、波及効果をもたらすことができます。例えば、国会議員に女性の割合が高い国は、世界が今必要としている国際環境条約を批准する可能性が高いという調査結果が出ています。
持続可能な開発目標とUDNPの新しい戦略計画2022-2025、そして近々発表予定のジェンダー平等戦略2022-2025を道標に、UNDPは#GenerationEquality(平等を目指す全ての世代)の実現に向け、地に足をつけた努力を続けていきます。UNDP自体も変化しており、現在では職員の男女比は50対50を達成しています。すべての人にとって持続可能で環境にやさしく、平等な未来は、ジェンダー平等なくしてはありえないことを知っています。 新型コロナウイルス(COVID-19)グローバル・ジェンダー対応トラッカーなどの情報源が提供するデータと分析結果が示すように、各国が、女性と女児、そして彼女らのニーズを、進みつつあるグリーンな復興の中心に据える必要があります。 これには、無償ケア労働、労働市場、女性に対する暴力、気候変動や環境悪化が女性と女児に与える影響など、女性の経済的・社会的保障を推進するための新しい政策措置が含まれます。いま、より平等な世界を作ることが、より持続可能な明日を築く条件を整えることになるのです。
アヒム・シュタイナー UNDP総裁