UNDPとOPHIによる新たな調査で、 紛争影響国の貧困率はそれ以外の国のほぼ3倍に上ることが判明
多次元貧困層は11億人、うち約5億人は紛争下で生存に苦闘
2024年10月16日
2024年10月17日ニューヨーク発 – きょう発表されたグローバル多次元貧困指数(MPI)に関する最新の報告書によると、全世界の貧困層のうち、暴力的紛争に晒された国に住む人々は4億5,500万人にも達し、貧困削減の進歩を阻んでいるだけでなく、場合によってはその後退を強いる結果となっています。
国連開発計画(UNDP)とオックスフォード貧困・人間開発イニシアチブ(OPHI)が共同で発表した今年の報告書では、112か国の63億人を対象とする多次元貧困に関する統計調査や、紛争と貧困の関係に関する緻密な分析が特徴として上げられます。これには20カ国の新たな調査データが含まれます。
2024年版MPI報告書は、紛争分析に広く用いられているデータセット3つのうち少なくとも1つに基づき、全世界で深刻な貧困を抱える人々が11億人に上り、そのうち40%が紛争や脆弱性に直面していたり、平穏な生活がなかなかできなかったりする国で暮らしていることを明らかにしています。
開発途上の地域や国でデータが不足していることを鑑み、グローバルMPIは10年(2012-2023年)にわたって測定され、世界的な水準と動向を比較可能な指数で示せるようになっています。今回の最新報告書では、国ごとの貧困データが調査時点での各国の紛争/脆弱性状況と突き合わされ、紛争と貧困の重なりに関する新たな知見が生まれています。紛争影響国ではデータの収集に困難が伴うため、こうした国では多次元貧困の過小評価が生じやすくなりますが、収集されたデータを見ると、紛争が貧困削減に破滅的な影響を生んでいることが分かります。
アヒム・シュタイナーUNDP総裁は、「近年、紛争は激化・拡大し、死傷者数は過去最多を記録しています。さらに、何百万人もの人々が避難し、生活と生計に大きな混乱を引き起こしています。今回の新たな調査によると、多次元貧困に苦しむ11億人のうち、ほぼ5億人が暴力的紛争にさらされている国に住んでいます。我々は、こうした人々を支援するための行動を加速させなければなりません。貧困と危機の連鎖を断ち切るために、具体的な開発と早期復旧のための資源とアクセスが必要」と語ります。
戦争状態の国は、多次元貧困の10指標すべてで欠乏の度合いが高くなっていますが、これは紛争が世界の最弱者層に壊滅的な影響を及ぼしていることをはっきりと表しています。例えば、電力を利用できない貧困層の割合は、比較的安定的な地域で20人に1人強であるのに対し、紛争影響国ではこれが4人に1人を超えています。同じような格差は子どもの教育(4.4%に対し17.7%)、栄養(7.2%に対し20.8%)、幼児死亡率(1.1%に対し8%)でも明らかになっています。分析によると、紛争下の貧困層は比較的平和な状況にある貧困層と比べ、栄養や電力の利用、水や衛生へのアクセスにおいて、はるかに厳しい欠乏に直面していることが分かります。
紛争の影響が最も大きい国では、貧困の削減が最も遅くなる傾向にあるだけでなく、貧困の水準自体も高いことが多くなっています。報告書で紹介されているアフガニスタンの事例を見ると、2015/16年から2022/23年に至るまでの混乱期に、530万人が多次元貧困に陥っています。紛争終結後のアフガニスタンの状況を検討できるデータも得られていますが、それは非常に厳しいものです。2022/23年には、アフガニスタンの人口全体のほぼ3分の2にあたる64.9%が貧困状態にあります。
サビーナ・アルカイアOPHI事務局長は次のように述べています。「今回の調査では、紛争下で多次元貧困層がどのような影響を被っているかについて、初のグローバルな定量的分析を行いました。そして驚くべき結果が得られました。我々はグローバルMPIを用いて、112か国で暮らす63億人のうち、11億人が貧困状態にあること、そして貧困層のうち4億5,500万人は紛争や脆弱性に直面、平穏な生活がなかなかできなかったりする国で暮らしていることを明らかにしました。つまり、こうした人々が闘う相手は、貧困だけではないということです。さらに、紛争影響地域では貧困の程度もはるかに高くなっています。ウプサラ紛争データプログラムによると、戦争状態にある国では、貧困層の割合が34.8%と、3人に1人を超えているのに対し、紛争の影響を受けていない国では、この割合が10.0%と、9人に1人程度にとどまっています。そして悲しいことに、紛争下では貧困削減のペースも遅くなるため、貧困層がさらに取り残される結果を招いています。こうした数字は私たちに否応なしの対応を迫っています。平和に投資しない限り、貧困に終止符を打つことはできないからです。」
最新のMPI報告書は、紛争下の貧困に関する詳細な分析に加え、貧困層の実体験と、全世界の貧困削減動向に関し、見識を提供しています。
- 全世界の貧困層11億人の過半数にあたる5億8,400万人は18歳未満の子どもです。全世界的に見ても、成人の貧困率が13.5%であるのに対し、子どもの貧困率は27.9%に上ります。
- これら11億人のうちの大半は、適切な教育(8億2,800万人)も、住宅(8億8,600万人)も、調理用燃料(9億9,800万人)も得られていません。
- これら11億人の過半数(6億3,700万人)の世帯には、栄養不良の家族が少なくとも1人います。同じ世帯の中に栄養不良の家族がいる人々の数は、南アジアで2億7,200万人、サハラ以南アフリカで2億5,600万人に及びます。
- 整合性のあるデータを入手できる86か国のうち、76か国は少なくとも何らかの期間に、MPIの値で測定される貧困を大幅に削減しています。
- 2021/2022年またはそれ以降までのトレンドデータを入手できる17か国と、少なくともコロナ禍を部分的にカバーするトレンドデータを入手できる7か国のうち、MPIの値と貧困率をともに大幅に削減できたのはベナン、カンボジア、コモロ、エスワティニ王国、ケニア、モザンビーク、フィリピン、タンザニア連合共和国、トリニダード・トバゴの9か国にすぎません。
2010年の発足以来、グローバルMPIは最弱者層、すなわち貧困層の中でも最貧層を特定する分析ツールとして、各国内での時系列的な貧困パターンを明らかにし、政策立案者がより効果的に資源を重点配分したり、政策を策定したりできるようにするうえで、重要な役割を果たしています。
貧困の中で暮らす子どもに関するデータ、農村部と都市部のパターン、各国内1,359か所の地方別データ、大陸や国、地方全体の貧困構成を含め、2024年多次元貧困指数報告書についてさらに詳しくは、hdr.undp.orgおよびophi.org.ukをご覧ください。
報告書は、https://hdr.undp.org/content/2024-global-multidimensional-poverty-index-mpiからダウンロードできます。