人間開発報告書 2021-2022年版
人間開発報告書 2021-2022年版
2022年9月26日
UNDPが発表した人間開発報告書の最新版、「不確実な時代の不安定な暮らし:激動の世界で未来を形づくる(Uncertain Times, Unsettled Lives: Shaping our Future in a Transforming World)」は、不確実性が幾重にも重なり合い、絡み合うことによって、これまでにない形で暮らしが不安定になっているのではないかと論じています。この2年間で、コロナ禍やウクライナ戦争のような危機が立て続けに発生し、それが社会と経済の大転換や地球規模の危険な変化、分極化の大幅な拡大と相まって、世界中の何十億という人々に壊滅的な影響が及びました。
UNDPはこれまで32年にわたり、各国の健康や教育、生活水準の指標として人間開発指数(HDI)の算定を行ってきましたが、この指数が世界平均で2年連続して低下したことは、これまでありませんでした。しかし今回、人間開発は2016年の水準にまで落ち込み、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けてこれまでに成し遂げられた成果も、多くが後退してしまいました。
この後退はほぼ全世界的に生じており、2020年か2021年のどちらかでHDIが低下した国は全体の90%以上に達しているほか、2年連続でHDIが低下している国も40%を超えており、多くの国で、この危機がさらに深刻化している様子がうかがえます。
報告書はこの新たな道筋を描くために、再生可能エネルギーからパンデミック予防に至るまでの投資と、社会保障を含め、社会が不確実な世界の浮沈に備えられるようにするための保険を重視する政策の実施を提言しています。その一方で、イノベーションも技術、経済、文化など多くの側面で、これから生じる思いがけない課題に対応する能力を高めることができます。