UNDPと東大が学生向けセミナーを開催、アフリカ開発に関する議論の場を提供

今夏、国際連合開発計画(UNDP)と東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)は、東京大学で学生向け特別セミナー「TOWARDS 2030: A ROADMAP FOR AFRICA'S PROMISE」を開催しました。

2023年9月8日

パネルディスカッション中のギルピン氏(中央) と学生登壇者たち

Photo: UNDP Regional Bureau for Africa

2023年7月20日 於東京 ― 国際連合開発計画(UNDP)と東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)は、東京大学にて、学生向け特別セミナー「TOWARDS 2030: A ROADMAP FOR AFRICA'S PROMISE」を開催しました。このイベントは、 UNDPアフリカ地域局戦略・分析・調査チーム長兼チーフエコノミストのレイモンド・ギルピンの来日に合わせて開催されました。

UNDPと東京大学は、2018年に締結された包括連携協定に基づいて協力関係を築いてきました。今回の講演と討論セッションは、2025年に日本で開催されるTICAD9を見据え、進化する世界情勢の中におけるアフリカの開発の中長期戦略とビジョンに関して、日本の若者世代に学びと意見交換の機会を提供することを目的として開催されました。

学生を中心とする約40人の参加者が集まったセミナーのオープニングでは、東京大学大学院新領域創成科学研究科の鈴木綾教授が、過去5年間の世界の変革、新型コロナウイルス感染症パンデミックの貧困削減への影響、ウクライナ紛争の地政学的影響、気候変動の持続的な課題などについて話しました。鈴木教授は、東京大学が「UTokyo compass」を通じて多様性と対話に対するコミットメントに注力し、グローバルサウス諸国、特にアフリカとの協力を積極的に求め、国際社会への具体的な貢献を目指していることを強調しました。

ギルピンは、2030年までのSDGs達成に向けたアフリカの道のりについて、この目標年への中間点を考慮しながら講演を行いました。アフリカが自立した開発資金を模索する必要性、またこのテーマについて議論することの重要性を強調しました。ギルピンはまた、気候変動や新型コロナウイルス感染症のような進行中の深刻な課題に取り組むことの重要性も強調しました。

ギルピンは一方で、こうした課題にもかかわらず、民主化の進展、持続的な経済成長、市場の拡大、外国援助への依存度の低下など、アフリカが達成した成果についても言及しました。さらに、UNDPは、経済構造転換、天然資源ガバナンス、持続可能なエネルギーへの公正な移行、女性と若者のエンパワーメントといった分野に引き続きコミットしていくと述べました。

その後、鈴木教授をモデレーターとして迎え、ギルピンと東京大学の学生4名によるパネルディスカッションに移行しました。

最初の質問者である教養学部国際関係論コース3年生の佐々俊之さんは、アフリカの経済開発において、女性、子ども、障害者といった社会から疎外されたグループが、受動的な受益者になるのではなく、「Nothing about us without us 」の原則に基づき、どのように積極的に参加できるかを問いかけました。ギルピンは、アフリカにおけるジェンダー・インクルージョンは単なる人権問題ではなく、重要な経済的現実であると強調し、女性の参加とインクルージョンがもたらす経済的利益を強調しました。UNDPがこうした目標を推進するために、女性とジェンダーに特化した事務所や特別プロジェクトに取り組んでいることにも言及しました。またギルピンは、現在の若者世代がグローバルなつながりを持ち、アフリカ開発に関する政策協議に積極的に参加する必要があることを強調しました。

新領域創成科学研究科国際協力学専攻博士課程のタパン・リリンディスさんは、新型コロナウイルス感染症パンデミックに関する質問をしました。特に、世界的なショック時にアフリカ諸国が自立を強化するための教訓と戦略に焦点を当てました。ギルピンは、パンデミックがアフリカの医療セクター強化に警鐘を鳴らす役割を果たしたことを強調し、より良い地域協力と強靭な経済運営を提唱しました。

続いて、新領域創成科学研究科国際協力学専攻博士課程の玉村優奈さんは、UNDPのプロジェクトにおける、声を上げることが困難な地域住民の参画およびセーフガードについて、またエコノミストや研究者がそうした人々と尊重し合える関係を築く方法に関して質問しました。ギルピンは、社会変革を推進する上で、地域住民にとって安全な空間が極めて重要な役割を果たすことを強調し、UNDPのマルチセクター・チームが、包括性を確保するために、プロジェクトにおいて社会的側面を優先していることに言及しました。

次に、ステークホルダーの多様性と協議プロセスにおけるパワーバランスにおいて、UNDPがどのようにそれらを考慮した上でプロジェクトを実施しているか、という玉村さんの質問に対し、ギルピンは、UNDPの特徴として、各国に常駐するカントリーオフィスの存在と役割について言及しました。現地スタッフを通し、現地のコミュニティとの効果的なコミュニケーションが可能となり、これにより文化に沿ったイベントや、コミュニティの力学を深く理解するのに大いに貢献していると説明しました。

最後に、公共政策大学院2年生の高橋尚大さんは、ギルピンがアフリカの民間セクターや新興企業に期待すること、またアフリカの開発に対する日本の貢献について質問を投げかけました。ギルピンは、アフリカのスタートアップ企業に対し、成功の可能性を高めるために、アフリカ大陸の経済エコシステムをよりよく理解するようアドバイスしました。また、日本とアフリカの協力関係については、両国の長年にわたるパートナーシップの成果を認めつつも、将来的にはより相乗的な関係になることへの期待を表明しました。

パネルディスカッション後、参加者との質疑応答では、開発が加速するにつれてアフリカ諸国間に生じる可能性のある齟齬についての懸念が挙げられました。ギルピンは、そのような齟齬を避けることの重要性を強調し、国家間の格差を最小化するためにUNDPが地方政府と協力して基本的な保健サービスや教育の提供を保証していることを強調しました。

2年後のTICAD 9を見越して開催された本イベントは、若者世代がアフリカの開発に関する議論に参加する貴重な機会となりました。参加者たちはより深い理解を得るだけでなく、自らの興味を育む機会を得ることができました。

集合写真:(左から右)– 鈴木綾教授、高橋尚大氏, 玉村優奈氏, ハジアリッチ秀子(UNDP駐日代表)、レイモンド・ギルピン、タパン・リリンディス氏、佐々俊之氏

UNDP Regional Bureau for Africa