持続可能な未来を切り開くため、アフリカの次世代リーダーと専門家に投資

2023年8月24日に神戸で開催された、TICADアドボカシー対話シリーズ「AFRI CONVERSE(アフリコンバース)」では、アフリカにおける次世代のリーダーや専門家の役割が議論されました。

2023年10月14日

パネルディスカッションの様子

Photo: UNDP Regional Bureau for Africa

アフリカは多彩な経済の可能性を秘めており、その若者は非常に貴重な資産です。さらに、アフリカ大陸は世界で最も若い人口を抱えており、この若者の潜在能力を活かす絶好の機会があります。しかし、この機会は若者が必要なスキルを身につけ、有意義な雇用機会を見つけることによってのみ実現できます。

この認識から、日本政府はアフリカを「日本と共に成長していくパートナー」と位置づけ、人材への投資を促進するため、さまざまなイニシアティブを展開してきました。2022年8月に開催された第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)では、岸田総理が「人的投資」と「質の高い成長」への日本のコミットメントを強調しました。 そして、2025年のTICAD 9に向けて、日本と主要なパートナーはアフリカの未来への投資を一層推進していくことが期待されます。

この背景を踏まえて、2023年8月24日に神戸で開催されたTICADアドボカシー対話シリーズ「AFRI CONVERSE(アフリコンバース)」では、アフリカにおける次世代のリーダーや専門家の役割について議論が行われました。このイベントは、独立行政法人国際協力機構(JICA)と国連開発計画(UNDP)、神戸情報大学院大学(KIC)が共催し、専門家がパネリストとして参加し、アフリカの若者の成長とリーダーシップの発展を支援するための機会やパートナーシップの可能性について探討しました。

イベントの冒頭では、JICA(独立行政法人国際協力機構) 理事長特別補佐の中村 俊之氏が、気候変動の悪影響、経済後退、食糧危機など、アフリカの開発課題に言及しました。一方で、2050年までに世界人口の4分の1を占め、平均年齢が25歳になるというアフリカの計り知れない潜在力も強調しました。

「JICAは、人材育成が国家の発展につながると考え、職業訓練、教育、技術促進等を含む様々な分野でアフリカの若い世代を支援しています。JICAはまた、アフリカのオーナーシップを尊重したアプローチを推進しており、アフリカにおけるカイゼンアプローチの普及や現地の社会的課題に取り組むアフリカの新興企業を支援する「Home Grown Solutions」プロジェクトなどを実施しています。特に日本の高齢化と市場縮小を考慮すると、アフリカと日本の関係は相互に有益であります。」と、中村氏は述べました。

国連開発計画(UNDP)総裁補兼アフリカ局長のアフナ・エザコンワは、アフリカがグローバルな問題の解決に果たす重要な役割と可能性を強調し、また失業や不完全雇用などの課題を認識し、アフリカの活力ある若者がスキルアップし、新たな機会を得られるよう支援する必要性があることを強調しました。

「彼らは援助ではなく、公平性を求めています。彼らはプロセスではなく、インパクトを望んでいます。ですから、彼らの希望、野心、願望を前進させるため、私たちも彼らに投資する必要があります。」と、エザコンワは述べました。

エザコンワはまた、アフリカ大陸自由貿易地域(AfCFTA)が経済変革に不可欠であることを強調すると同時に、UNDPがアフリカ連合と提携し、将来グローバルリーダーとして活躍が期待されるアフリカの若い女性に国連で働く機会を提供する、アフリカ・ヤング・ウーマン・リーダーズ・フェローシップ・プログラムについて言及し、UNDPとして、若者と女性のエンパワーメントに取り組んでいることを強調しました。

「人的資本開発、国の経済の両方が同時に成長することがUNDPにとって必須であり、重要な優先事項であります。また、UNDPは再生可能エネルギーと技術にも注力しており、これらは日本のような偉大なパートナーと共に成長できる分野であります。」と述べました。

続くパネルディスカッションは、神戸情報大学院大学副学長・特任教授の内藤智之氏によるモデレーションの下、アフリカの教育システムの不十分さと、若者や次世代に投資するパートナーシップ・プログラムの重要性が強調されました。また、アフリカの学生が海外留学する際の利点について議論が行われ、アフリカビジネス教育(ABE)イニシアティブの参加者が、スキルを習得し、ビジネスを更に発展させることで、将来的に他の若者にも新たな機会を提供できる可能性が強調されました。

「日本でのキャリアを目指すアフリカの若者にとって、日本に来て何を成し遂げたいのかという目的の明確化と自己理解がとても重要です。」と、株式会社パソナグループ執行役員、Awaji Youth Federation (AYF) 理事長の青田 朱実氏は述べました。

「アフリカのリーダーを育てるためには、人材を育成するプログラムの量と質の両方に焦点を当てる必要があります。また、若者の参画の継続性も重要です。」と、UNDPのアフリカ・ヤング・ウーマン・リーダーズ・フェローシップ・プログラムの調整官であるクダクワシェ・チンゴノは続いて強調しました。

神戸情報大学院大学の学生で、アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ) 参加者の、デルフィン・ムカヒルワ氏は、「真に成功するリーダーを育成するには、サポート、評価、励ましの要素が欠かせません。メンターシップを通じて、個人のスキルと知識の応用、成長を促進できます。また、アフリカ内でのネットワーキングも非常に重要であり、若者がリーダーから学び、成長するためのネットワークを積極的に活用すべきです。」と提案しました。

最後に、エザコンワは、アフリカの発展を妨げている一つの要因として、資金や能力の不足ではなく、アフリカ大陸に対する国際社会からのネガティブな認識があることを強調しました。「ネガティブな見解も存在しますが、アフリカにはより良い変革をもたらす若い世代が存在します。そのため、アフリカと他の国際的アクターとの間でさまざまなパートナーシップを促進し、構築するためのパートナーシップ・フォーラムとしてのTICAD 9は、究極の目標です。 」とエザコンワは強調しました。

加えてモデレーターの内藤氏は、活力ある若者と彼らがもたらす変革力を強調し、登壇者全員が、TICAD 9がアフリカの若者が知識を習得し、アフリカの発展に貢献する機会を増やすための重要な場であると賛同しました。

「アフリカは、経済の多様化と成長のための膨大な潜在力を秘めており、その若い人口は非常に貴重な資産です。世界で最も若い人口を抱えるアフリカ大陸には、この人口ボーナスを活用する絶好の機会が存在します。ただし、これを実現するためには、若者が必要なスキルを身につけ、有意義な雇用機会を得る必要があります。」と、JICA関西センター所長の木村 出氏が、アフリカの若い世代への期待と、その若者たちと日本企業との機会強化の可能性について述べ、イベントは幕を閉じました。

 

エザコンワ(右から4番目)とABEイニシアチブ参加者及び関係者での集合写真

Photo: UNDP Regional Bureau for Africa