人間開発の主眼は、人を主体とし、人々の機会と選 択肢を広げ、ウェルビーイングを改善することです。 人々やコミュニティは、開発の受動的な受益者ではな く、地球を慎重に管理し、将来世代の為の健全な環 境を守り、経済と社会、政治、そして人間の安全保 障の構築に全面的に参画する能動的な行為主体です。

アジア太平洋の人間開発は進歩と格差、そして混乱 の道のりをたどってきました。驚くべきことに、こ の地域はどの持続可能な開発目標も達成できる目途 が立っておらず、数百万人が多数の脅威を感じなが ら、不安定な生活を送っています。そしてあらゆる 側面において、現状を維持することはますます難し くなりつつあります。アジア太平洋地域は、気候変 動を始めとする人類存亡にかかわる脅威に直面して おり、技術と貿易をめぐる情勢の変化は、経済成長 と雇用創出を妨害するおそれがあります。また、民 主主義と国家機構の衰退や、世論の両極化が進んで いることにより、政策の効果的な実施が危機にさら されています。

『2024 年アジア太平洋人間開発報告書』は、混迷を 深める情勢の中で、人間開発を再び活性化させる為 の新しい方向性を提案しています。域内のこれまで の開発の成果を基盤とし、実行可能な方向性を定め るとともに、人間開発の主流化、成長戦略の再構成、 変革の実現という3つの支柱を軸としたアプロー チを提唱しています。