ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に向け、日本とUNDPのパートナーシップを活用
2023年12月26日
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは、すべての人々が経済的な困難に直面することなく、質の高い保健サービスを利用できるようにすることであり、保健医療提供が目指すべき姿です。 「持続可能な開発目標(SDGs)」の中に組み込まれたUHCは、保健が持続可能な開発の推進力であると同時に成果でもあるという確証を反映しています。
ガーナでは、日本政府と国連開発計画(UNDP)との長年にわたるパートナーシップが、UHCと人間の安全保障の達成に向けた同国の歩みを支える上で重要な役割を果たしてきました。
人間の安全保障に関する「2022年国連開発計画(UNDP)特別報告書」で強調されているように、保健、人間開発、人間の安全保障は相互に関連しています。生活の質や生計を含む基本的権利は、人間の安全保障の保証なしには達成できません。UNDPは日本政府の支援を受けて、ガーナにおいて、強靭で持続可能な保健システムの構築と保健サービスへのアクセス改善を目的としたいくつかのプロジェクトを実施し、UHCと人間の安全保障の進展に貢献してきました。
今週、UNDPガーナは、外務省の赤堀地球規模課題審議官の訪問を歓迎しました。
赤堀地球規模課題審議官はコトカ国際空港で現地視察を行い、同国のパンデミック対策強化を目的としたモバイルラボラトリーの運営を視察しました。「 COVID-19の流行期間および収束後に弱者層に対する必要不可欠なサービスの継続を支援するためのコミュニティ医療システムの強化」プロジェクトを通じて、同国の4つの主要な入国地点であるアフラオ、エルボ、パガ、コトカ国際空港にモバイルラボラトリーが設置されました。このプロジェクトは日本が支援し、ガーナ保健局と共同で実施されています。
コトカ国際空港のモバイルラボラトリーを訪問した赤堀地球規模課題審議官は「私たちは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと人間の安全保障の最前線にいます。日本は、このようなプロジェクトを実現できることを大変誇りに思います」と述べ、UHCと人間の安全保障の強力な推進者として日本が果たす役割を強調しました。
日本政府とUNDPの協力関係から生まれたもう一つの重要なイニシアティブで、ガーナにおける強固で強靭な保健システムへ向けた前進を推進しているのは、新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(Access and Delivery Partnership:ADP)です。 UNDP主導のもと、 ADPのパートナーであるUNDP、世界保健機関(WHO)、熱帯病研究・訓練特別プログラム(TDR)、PATHは、結核、マラリア、顧みられない熱帯病(NTDs)に対する医療技術への公平なアクセスを拡大するため、低・中所得国に技術支援と能力開発支援を提供してきました。
UNDPガーナ常駐副代表のスクロブ・ホシュムハメドフ氏は、「UHCの達成と人間の安全保障の強化は、特に最も弱い立場にある人々に対して新しい医療技術へのアクセスを保証することなしには不可能です。このような背景から、日本政府によるアクセス・アンド・デリバリー・パートナーシップへの継続的な支援と資金援助が非常に役立っています」と指摘しました。
ガーナにおいてADPは、新しい医療技術の効果的な導入を可能にするための主要な保健システム機能の強化を支援しています。ADPの支援により、ガーナにおける新規ワクチンの持続可能なアクセスと提供(SAVING)コンソーシアムは、ガーナ食品医薬品局(FDA)、保健省、ガーナ保健局など、国の主要な関係機関を集め、RTS,Sマラリアワクチンの導入を共同で計画しています。SAVINGコンソーシアムは、マラリアワクチンの効果的な導入に対する障壁を特定し対処するために、多部門的で実装研究を中心としたアプローチを採用しています。
ガーナのUHC達成に向けた取り組みは、同国における医療技術評価(Health Technology Assessment: HTA)の制度化を目指すADPの支援を通じて大きく前進しました。 HTAは、医療技術を評価、選択、実施するための学際的なプロセスであり、これによってエビデンスに基づく意思決定が容易になり、UHCの費用対効果と持続可能性を確保する手段が提供されます。
UNDPが主導するADPは、個々の症例の安全性報告のための全国的な電子管理システムであるSafety Watch Systemの導入や、最近ではMed Safetyといった起こりうる医薬品副作用の迅速かつ直接的なコミュニティへの報告を促進するモバイルアプリケーションの導入を通じて、ガーナにおける医薬品安全性管理のデジタル化を支援してきました。このシステムにより、関連報告は2016年から2019年にかけて30%以上増加しています。
NTDsの予防と根絶というガーナの目標を支援するため、ADPは国立潰瘍対策・イチゴ腫撲滅プログラム(National Buruli Ulcer Control and Yaws Eradication Programme)と協力し、医療従事者によるNTD症例発見を支援するためのモバイルアプリの試験的使用や、NTDsへの資金援助改善のためのアドボカシーを支援するためのNTD投資事例の作成など、遠隔地でのイチゴ腫流行マップ作成調査を実施しました。
また、ADPはガーナFDAが医療技術の品質、安全性、有効性を確保する上で重要な役割を果たせるよう、FDAの能力強化の取り組みも支援してきました。制度開発計画の策定は、ガーナFDAの継続的な改善と強化の指針となり、2020年、ガーナFDAは規制監督に関するWHOのベンチマークである「成熟度レベル3」を達成し、安定して機能する、統合された規制システムを示しました。
赤堀地球規模課題審議官の訪問は、ガーナにおける日本とUNDPのパートナーシップの具体的な成果を紹介する機会となりました。このパートナーシップは、保健システム強化のための技術的支援を提供しただけでなく、ガーナにおける保健と人間の安全保障に向けた重要な一歩である、強靭で包括的な保健医療システムづくりに貢献しています。