日本の民間企業向けに開催されたSDGs投資機会セミナーでは、南アフリカの持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた投資拡大に焦点が当てられました。
国連開発計画(UNDP)が2021年3月31日に開催したこのセミナーには、主に日本のビジネス界から220名以上が参加しました。UNDPは、グローバルに展開している「SDGインパクト」イニシアティブの下、2020年9月に発行された「南アフリカSDG投資家マップ2020」を通じて特定されたインパクト分野に関する知見を提供しました。
このセミナーでは、南アフリカ最大の開発課題である不平等、失業、貧困などに対する創造的なビジネス・ソリューションを展開する南アフリカの先駆者たちによる取り組みを紹介し、教育、医療、農業、インフラ分野における南アフリカのインパクト投資の機会を説明しました。
本セミナーでは登壇者・参加者間のネットワーク構築や情報共有も行いました。アフリカ開発会議(TICAD)のフォローアップ活動を通じて、日本のビジネス界や主要なステークホルダーに対してUNDPが提唱してきた主要なビジネス・アジェンダを足がかりに、幅広いネットワークを提供しました。
丸山則夫駐南アフリカ共和国特命全権大使は、参加者に向けて、こうした取り組みが有する戦略的ビジョンに対する強い関心を表明しました。
「南アフリカSDG投資家マップ2020は、日本企業にとって有益なツールになると信じています。日本政府は、貿易およびビジネス促進のバックボーンとして、南アフリカのUNDPと緊密に連携し、自動車業界の人材育成や新型コロナに対する統合的な対応を通じてSDGsの達成に貢献しています。日本とアフリカのビジネスパートナーシップをさらに推進する中で、私たちのパートナーシップが成長することを願っています」と、同氏は語りました。
南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領府の投資特使であるプムジレ・ランゲニ氏は、世界が新型コロナのパンデミックへの対応に追われている最中にこの投資家マップが発行されたことを振り返りました。南アフリカにおける投資機会の調整を加速させる必要性があると再認識させたのがパンデミックだった、とランゲニ氏は説明しました。
「パンデミックが南アフリカの経済や国民全体に壊滅的な打撃を与えていることを考えると、投資拡大が急務であると改めて感じています」と同氏は語りました。ランゲニ氏は、投資は金銭的な見返りだけでなく、若者がイノベーターやリーダーとして台頭するためのスキルを提供しつつ、失われた雇用の補填にも役立つと指摘しました。
南アフリカの「The National Income Dynamics Coronavirus Rapid Mobile Survey 」によると、パンデミックの影響で、南アフリカでは300万人が職を失ったと推定されています。これは、2020年2月の1700万人から2020年4月の1400万人へと、雇用者数が18%減少したことを意味します。
ランゲニ氏は、南アフリカが過去3年間に、同国の4つの優先ターゲット分野のうちの2つにあたるインフラと農業を中心に、国内外から投資を引き出す上で有意義な進展を遂げたことを強調しました。「私たちは教育と医療分野への投資拡大を提唱するために、さらに行動を起こす必要があります」
医療と教育への投資拡大の必要性を受けて、両分野の企業代表者がプレゼンテーションを行いました。
Unjani ClinicsのCEOであるリンダ・トゥーサン氏は、手頃で質の高いプライマリーヘルスケア・サービスを確保することが優先目標であると語りました。「現在、南アフリカの低所得者地域で84のクリニックを運営し、毎月約55,000件の診察を行っているUnjani Clinicsの取り組みは、SDGsの3、5、8、17の目標に直接合致するものです」と同氏は言います。
これらの目標はそれぞれ、SDGsの「すべての人に健康と福祉を」「ジェンダー平等を実現しよう」「働きがいも経済成長も」「パートナーシップで目標を達成しよう」を前進させるものです。
UNDPの民間セクターおよびSDGファイナンス特別顧問のトーマス・セールス氏は、同国の医療分野には大きな投資機会があると指摘しました。「これは特にパンデミックを考慮してのことです。民間セクターの関心の高まりや複数の銘柄の株式上場が、民間セクターへの投資がさらに拡大する可能性やダイナミズムを証明しています」
投資家が注目すべき分野は以下の4つであるとセールス氏は強調しました。
- 中間価格帯の医療施設
- モジュール型医療施設
- デジタルヘルスケアプラットフォーム
- 医療従事者研修センター
民間医療は南アフリカの大多数の人々には手が届かないため、「人口の84%が公的医療に頼っており、公的医療は限界を超えています。そのような中で市場価値は高まっており、2022年までに370億米ドル、2027年までに471億米ドルになると推定されています」と同氏は語りました。
乳幼児期の子どもの発達に取り組むGrow Educare Centresを代表して発表を行ったCEO兼共同設立者であるトレース・チャンバース氏は、すべての子どもたちがアクセスできる、手頃で質の高い教育を確保することが重要課題だと述べました。「現在のところ、南アフリカの教育制度は子どもたちに適切なサービスを提供しておらず、半数以上の子どもたちが学校教育を修了していません」
シリル・ラマポーザ大統領の特別経済顧問であるトゥルーディ・マカヤ氏は、南アフリカ政府が、同国の成長と開発における持続可能な投資の重要性を強調しており、多国間投資家および民間セクターの投資家と協力して投資環境の強化に努めていると述べました。
また、マカヤ氏は、南アフリカに拠点を置く多くの日本企業とのビジネス関係は、継続的で良好であると語りました。「2年前に開催されたアフリカ開発会議(TICAD7)に南アフリカが参加したことが、このような重要なビジネス関係をより強固なものにしたと、私たちは確信しています」
UNDPは、約30の持続可能な投資機会の特定を含む南アフリカSDG投資家マップの作成を主導する中で、この課題に大きく貢献してきました。「強固で信頼できる持続可能な投資マップにより、投資家は機会を適切に評価し、リスク、報酬、影響を測定することができます」と同氏は語りました。
UNDP南アフリカ常駐代表のアヨデレ・オデュソラ博士は、TICADの共催者として、UNDPは引き続き南アフリカと日本の民間セクターとの革新的なパートナーシップの拡大に向けて取り組んでいくことを参加者に約束しました。これにより、南アフリカの社会経済的な包摂性と持続可能な開発を強化することができると同博士は指摘しました。
「そのために、日本のビジネス・パートナーの皆様には、特に医療、教育、インフラの分野において、基本的なサービスへのアクセスや手頃な価格での提供を向上させるためのビジネスモデルの設計や提供を含め、積極的な役割を果たし、リーダーシップを発揮していただきたい」と述べました。
このセミナーのフィードバック調査によると、参加者は、プレゼンテーションの中で示されたインパクト分野について更なる対話やネットワーク構築に関心があることが明らかになりました。インフラ(52.6%)、農業(52.6%)、教育(47.4%)、医療(34.2%)。UNDPは、南アフリカの持続可能な成長のバックボーンとして質の高い投資を加速するために、官民組織間で引き続き議論を行い、ネットワークの構築を今後も促進してまいります。