アフリカ工業化の日記念:日本企業のアフリカ進出を促進するビジネスセミナーを開催
2024年1月9日
2023年11月、国連開発計画(UNDP)、日本貿易振興機構(JETRO)、国連工業開発機関(UNIDO)、国際協力機構(JICA)は、アフリカ工業化の日を記念し、アフリカのビジネス機会と展望を考えるセミナーを開催しました。本セミナーは、2024年に開催されるTICAD閣僚会合、そして2025年に予定されているTICAD9と日本・アフリカ官民合同経済フォーラムに向けて、日本企業のアフリカ市場進出を促進する目的で開催されました。
アフリカと日本の間でのビジネスや投資、貿易の促進はアフリカ開発会議(TICAD)においてとりわけ重要な課題です。2022年にチュニスで開かれたTICAD8で岸田首相は、今後3年で官民合わせて300億ドルを投資していく方向性を示しました。日本はアフリカとともに成長するパートナーとなるべく、TICAD8でJETROが主催したビジネスフォーラムでは、アフリカと日本のビジネス関係者500名以上が参加、90以上の協力・連携に関する覚書が交わされました。
こうした背景を受け、UNDP、JETRO、UNIDO、JICAは、日本とアフリカの民間セクター間の貿易と投資を強化するために連携しており、2023年11月28日にアフリカ工業化の日(11月20日)を記念したセミナーを共催しました。
セミナー冒頭では、UNIDOナイジェリア地域事務所代表のジャン・バコレがアフリカ連合/UNIDO/アフリカ経済委員会による工業化の日記念のメッセージを代読しました。アフリカの発展において、女性のエンパワーメントと産業開発は相互に補完的な役割を果たすことを強調し、女性の起業家精神を奨励するとともに市場アクセスの改善や技術移転を進めることで包括的な発展が実現され、地域経済が健全な成長を遂げると述べました。
また、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)事務局の首席産業開発アドバイザーであるテンバ・クマロ氏は、アフリカのビジネスの展望について述べました。特に、人口に占める割合が大きい若年層がモバイル機器等のデジタル操作に優れていることを指摘し、アフリカは他地域よりもデジタル経済に大きな可能性を有することを強調しました。また、AfCFTAの制度化が進展しており、その事例として、アフリカ各国通貨での決済を可能とする汎アフリカ決済システム(Pan-African Payment and Settlement System:PAPSS)の設立に触れました。
続くパネルディスカッションではUNIDO東京事務所所長の足立文緒がモデレーターを務め、四機関による支援を活用してアフリカに進出している日本企業がビジネスの概要や活用したサービスについて述べました。
中和機工株式会社の代表取締役社長、今尾邦明氏は、JICAの事業を受託しているコンサルタントからの誘いを受け、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業に参加したことが、モロッコ進出の契機となったことを述べました。さらに、UNIDOのSTePPを活用し、セネガルとマダガスカルでも事業展開を達成したことを強調し、これらの成功例を挙げました。また、今尾氏はヒト・モノ・カネの資源が、特色のある自社製品のモノ以外不足している中小企業にとって、ヒトとしてのコンサルタントの知見や経験、カネとしての公的機関の支援の活用が極めて有用であると述べました。
レックスバート・コミュニケーションズ株式会社のコンサルティング事業部長、サムエル・イマニシムエ氏は、同社のアフリカ進出において、JETROによるネットワーキングやUNIDOのアドバイザー事業など、公的な支援ツールを活用した経緯について述べました。同氏はさらに、アフリカ進出に際して最も重要なのは現地のニーズや状況を理解することであると強調しました。また、アフリカでは公的機関や国際機関による土台作りが依然として重要であるため、政府との連携により、民間が介入可能な領域との明確な役割分担を進めることが必要であると述べました。
株式会社アセンティア・ホールディングスの取締役、松本信彦氏は、2019年のTICAD7でのJETRO主催サイドイベント「ビジネスフォーラム」に参加し、日本のフランチャイズをアフリカ企業に提案する挑戦を開始したと述べました。彼はさらに、現地のニーズを理解するという観点で、ABEイニシアティブなどのアフリカからの留学生という資産を民間がどう活用していくかを考えることが重要であると主張しました。また、将来の事業展開においては、信頼できるパートナーを見つけることが肝要であり、特に進出段階ではスタートアップの中で信頼性のある人物を見極め、パートナーシップを築くことが不可欠であると述べました。
太陽商事株式会社の代表取締役社長、中部万里子氏は、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業に参加し、採択されたことがアフリカ進出の契機となったと述べました。販路拡大のプロセスで、様々なセミナーに参加しても、アクター同士の関係を理解するのは難しかったと語り、実際に参加することで、自然な形でつながりが広がることを実感したと強調しました。
続いて、JICAアフリカ部計画・TICAD推進課のシニアアドバイザー(アフリカ開発協力政策)の吉澤啓が、UNDP、JETRO、UNIDO、JICAによる民間企業支援の概要を述べた後、UNDP駐日代表事務所代表のハジアリッチ秀子が閉会の挨拶を行いました。ハジアリッチは、SDGsの達成に向けて、インパクト投資やスタートアップ企業支援の重要性を強調し、これらの投資が持続可能なビジネスモデルを促進し、イノベーションを刺激することで社会的な変革が可能であると主張しました。最後に、UNDPのSDGs Innovation Challengeに言及したうえで、ビジネスがSDGsに貢献するためにはローカルなステークホルダーとの積極的な対話が欠かせないと指摘。現地のコミュニティとの協力が具体的なニーズを浮き彫りにし、より効果的な取り組みが生まれると述べました。