新型コロナウイルス感染症に関し、国連開発計画(UNDP)と日本は、街を清潔かつ緑あふれる場所に保つためにコミュニティへの投資や支援を提供し、コロナ禍で生計を立てることが難しくなった弱い立場にある人々の雇用創出に取り組んできました。 エチオピアでは2020年3月に新型コロナウイルスの最初の感染例が発表され、2021年3月までに20万件を超える感染事例が記録されています。
各種プログラムを担当するUNDPエチオピア事務所のクレオファス・トロリ副代表は次のように述べています。「エチオピアの零細・中小企業に対して知識やツール、資金を提供し、コロナ禍の影響を軽減することは、これまでも、そしてこれからも、UNDPとエチオピア雇用創出委員会および日本政府の連携の重要な焦点であり続けます。こうした企業が危機から回復し、新たな市場の動きに合わせた調整を行うことは、2021年以降の重点分野です。UNDPは長年にわたる重要な戦略的パートナーである日本政府との最新のプロジェクトを通じてこうした支援を提供します。これまで、日本政府とのパートナーシップを通じ、平和維持における能力構築から難民やホスト・コミュニティの生計支援、そして現在ではコロナ禍からの回復まで、幅広い課題に取り組んできました。」
コロナ関連の支援では、UNDPが支援する既存の戦略を中心に実施しました。統合的な固形廃棄物管理のスケール・アップや、エチオピア都市開発・建設省と協働で都市の緑化を促進する「都市におけるNAMA(国別緩和行動)コンポスト・プロジェクト」なども含まれています。アダマ、ビショフツおよびディレ・ダワにおけるこのコンポスト・プロジェクトはコロナ関連の支援と併せて、5,000件を超える臨時雇用を創出し、そのうち3,000件以上が女性の雇用につながりました。
廃棄物の管理および緑化は、ジジガにおけるコロナ対策支援の焦点です。モハメド・アブデュルカディルはジジガに暮らす若い男性です。コロナ禍で、日給を得るために奔走する彼のような人々の動きは制限されたといいます。コミュニティに対するコロナ関連の支援によって、臨時雇用による収入が得られるだけでなく、街に清潔さと美しさがもたらされることに彼は喜びを感じています。
ティギスト・アブラハはディレ・ダワに暮らし、リサイクル用プラスチックの分別によって生計を立てています。彼女は、このコロナ関連の支援が施しではなく労働を維持するために役立つものであったことに感謝しています。コロナ禍の影響で、彼女は不利な状況に置かれました。プラスチックの回収量は減り、家族のための収入が減りました。しかし、地域のコミュニティにおいて、800 km以上におよぶ排水用水路の清掃などを手伝う臨時の仕事によって所得を得ることができました。
ハイレ・フィガは、ゲドおよび西グジ地区にある4地帯のうちの一つに住んでおり、コロナ関連の支援を受けています。同地域は人口密度が高く、近年の紛争を受けて多くの国内避難民や帰還者が暮らしています。このことによって土地には大きな負荷がかかり、天然資源の劣化は同地域の懸念事項となっています。ハイレは自然保護活動に参加して得た所得を子供の教育費用や家族のための食用肉の購入にあてました。
日本との連携を通じて、エチオピア雇用創出委員会の立ち上げたコロナ緊急対策プロジェクトの支援も行われており、フォーマル・セクターおよびインフォーマル・セクターの双方における零細・中小企業に対してコロナ禍が及ぼした影響の評価、モニタリング、およびジェンダーに配慮した方法による対策を実施しています。
エチオピア雇用創出委員会が立ち上げた新たなオンライン・プラットフォーム導入のため、国内9地域と2つの市当局からの関係者に対する研修を実施し、エチオピア開発銀行とも協力して、国内から選出された零細・中小企業に対してソフト・ローンや助成金を分配しました。インフォーマルなビジネスに対しては10,800エチオピアビルの助成金が提供され、一方で零細・中小企業に対しては30,000~60,000エチオピアビルのソフト・ローンが提供されました。またこのプロジェクトでは、零細・小ビジネスに対して16,000~75,000エチオピアビルの賃金も助成しました。
セメラに暮らすハスナ・アリューは、国内から提出された17,834件の申請のうち、最終候補に選ばれた13,272件の零細・中小企業(70%は女性代表者による事業)を代表する一人でした。ハスナは、セメラや近隣の町で農産品の販売を行うことで繁盛していた団体のメンバーの一人で、地元の大学との供給契約も結んでいました。ですが輸送費の高騰や大学の休校によって、大きな打撃を受けました。彼女は、コロナ対策支援で受け取った10,800エチオピアビルの助成金を活用し、売り手や買い手と再びつながり、これまでのビジネスを軌道に戻そうとしています。