UNDPデジタル最高責任者室は、UNDP「デジタルXスケール・アクセラレーター(デジタルX)」に新たに参加する10のプロジェクトを発表しました。「デジタルX」は、UNDPが様々な問題解決に向けて各国で展開している取り組みについて、そのインパクトをより大きなものにしつつ地理的にも拡大することを目的とする事業で、日本政府より多額の支援を受けています。
応募総数180件から選ばれた10件のプロジェクトには、従来の課題の克服と規模の拡大を目指し、資金のほか、5か月間の組織的支援、さらには技術的専門知識が提供されます。最先端のデジタル技術を活用することで、プロジェクトのインパクトを飛躍的に高め、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた弾みをつけることが狙いです。
選出されたプロジェクトは、下記のとおりです。
I
スーダン:AIの活用でヘイトスピーチの傾向を把握
UNDPスーダン事務所は、現地の団体との連携で、社会的企業Koe Koe Techが開発し、受賞歴もあるプラットフォームMeekinのローカライズを図ります。このプラットフォームは、ヘイトスピーチをめぐるソーシャルメディアの傾向と、過激主義のリスク要因や早期に警戒すべき兆候の把握に役立ちます。今回のプロジェクトは、注意を要する8万件の投稿とコメントをFacebookで抽出した、Meekinのミャンマーにおけるパイロット・プロジェクトの成功を受けて実施されるものです。
II
ドミニカ共和国:デジタル医療プラットフォームの拡大
eHospitalは、ドミニカ共和国の社会的弱者を対象に、医師の遠隔診断を通じて医療を受けやすい環境を提供しています。AI医師はオンラインのプラットフォームを介して、患者をスクリーニングし、患者の質問に答えたり、専門医を紹介したり、緊急対応を取るよう指示したりします。患者はデジタル診察を通じ、生身の医師に相談することもできます。
III
アフリカ地域と小島嶼開発途上国:再生可能エネルギーによる電化に向け、地理空間データに関する協業の場を提供
このプロジェクトでは、全世界でまだ電力を利用できない10億人へのエネルギー供給を加速するため、アドボカシーとパートナーシップの形成を図るマッチング・プラットフォームを立ち上げます。この協業の場には、非従来型の金融機関や、社会的インパクト投資家、炭素排出権取引市場、クラウドファンディング当事者その他が集い、多様なエネルギー施策の後押しとなります。
IV
バングラデシュ:AIの活用で最弱者層への支援を
トーゴでは、カリフォルニア大学バークレー校の「効果的なグローバル・アクション・センター」、非営利組織のGiveDirectly、トーゴ政府を含む組織の連合体が、携帯電話と衛星メタデータを使って、最も困窮した人々を特定するシステムを立ち上げました。「デジタルX」の支援を受け、このプログラムは、コロナ禍により、貧困率が倍増しているバングラデシュでも展開されることとなりました。このプログラムでは、テスト版で1万人の最弱者層の特定を行った後、対象人数を数百万人に広げることを目標としています。
V
ソマリア:技能研修・職業訓練プラットフォームの構築
UNDPソマリア事務所は「デジタルX」の支援を受け、民間企業の需要と人材供給のマッピングをリアルタイムで行うプラットフォームを構築します。このプログラムは、67%と驚異的に高い若年層の失業率に対処することを目的としています。バングラデシュで成功を収めたNISE2を基に構築されるプラットフォームには、求人検索エンジンとダッシュボードのほか、求職者や雇用主、研究者、政策立案者の研修を行うコミュニティ・スペースも設けられます。
VI
ウガンダ:Jumia電子市場との連携で、物売りのオンライン販売が可能に
UNDPウガンダ事務所は、サプライチェーンの持続を図りながら、インフォーマルセクターの物売りがオンラインで販路を開拓できるよう、アフリカ最大の電子商取引プラットフォームJumiaとの連携を強化します。このプロジェクトでは、「デジタルX」の支援を通じ、これまでのカンパラでの成功事例を新たに別の2都市へと広げたうえで、これら3都市でのテストの教訓をまとめ、国内と地域全体での将来的な成長に向けた環境整備を図ります。
VII
インド:Ajeevikaアプリの普及で、女性に政府サービスに関する情報を
UNDPインド事務所は、農村部の女性が政府サービス関連情報へアクセスしやすくなるよう、当初ウッタラーカンド州で立ち上げられたAjeevikaアプリの機能性を拡充します。次段階では、コロナ禍の課題に対処できるよう、サービスが拡大されます。Ajeevikaを活用し、役所での人間同士の物理的接触を減らすことにより、感染拡大を防ぐことにつながります。また、アプリの機能拡張でオンライン市場を創設し、インフォーマル・セクターの物売りが感染リスクを抑えつつ事業を継続できるようにします。
VIII
キルギス:Eラーニング・アプリのBala Tech普及で、さまざまな生徒の学びをサポート
キルギスのUNDPアクセラレーター・ラボは「デジタルX」を通じ、有望なデジタル技能学習プラットフォームであるBala Techの普及を図ります。Bala Techは、キルギスの学生間のデジタル格差を縮めることを目標に、平均年齢14歳の子どもがゲーム感覚でデジタル技能を身に着けられるアプリです。現時点で、5か国の就学年齢の子ども1万5,000人が、このアプリを利用しています。キルギスの利用者の78%は、正規教育へのアクセスが限られている農村部で暮らしています。
IX
リビア:Telemedicine Libyaの取り組み拡大で、農村部への医療拡大を
社会的弱者層に対するコロナ禍の影響を軽減するため、UNDPリビア事務所は、スタートアップ企業Speetarとの連携により、Telemedicine Libyaの開発に取り組みます。この官民パートナーシップは、リビアの医療システムを社会の最弱者層に拡大するものです。Telemedicine Libyaの活用により、弱者層や移民、遠隔地の農村部で暮らす人々に、良質の遠隔医療サービスを提供できるようにします。
X
アゼルバイジャン:Turn Digital!の拡大で、中小企業のオンライン取引を可能に
Turn Digital!は、中小企業(SMEs)に対するコロナ禍の影響を緩和するため、アゼルバイジャン政府が実施している取り組みです。Turn Digital!を使えば、消費者と中小企業がオンラインで取引できるようになります。消費者はオンラインで教育や医療、エンターテインメント、食料、通信その他の商品やサービスにアクセスできます。中小企業にとっては、このプラットフォームによって、顧客につながることができるほか、ビジネスのデジタル化に対する支援も得られます。