開催報告:公開サイドイベント「ウクライナでの日本企業のビジネス展開を探る -機会と課題-」

2024年11月21日
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Photo: UNDP Tokyo

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11月7日、国連大学エリザベス・ローズ国際会議場およびオンラインにて、「ウクライナでの日本企業のビジネス展開を探る -機会と課題-」が開催されました。本イベントは、G7法務大臣会合の枠組みでウクライナ汚職対策タスクフォース(ACT)の会合を機に、公式サイドイベントとして開催され、ウクライナの復興における民間企業の役割と、進出に際しての課題について、汚職対策の観点を含めた議論が展開されました。また、会場には、ACT会合に参加したウクライナ政府代表団、G7各国の法務省関係者、さらに日本の民間企業を中心に、ウクライナ進出を支援するコンサルティング企業をはじめ、インフラ関連企業や製造業、商社などの参加が目立ち、ビジネスを通じたウクライナ復興への関心の高さがうかがえました。 

冒頭の挨拶において、隄良行 法務省審議官は、ウクライナにおける汚職対策はウクライナの経済復興の前提であると述べ、依田學 経済産業省審議官からもウクライナでのビジネス環境の整備の重要性が強調されました。続いて、クリストフォロス・ポリティス UNDPウクライナ事務所常駐副代表は、プレゼンテーションの中でウクライナの復旧・復興のためには、包括的で透明性の高いプロセスが重要であると強調し、民間企業が復興を主導していくことへの期待を述べました。 

木場亮 JETRO海外地域戦略主幹がモデレーターを務めたパネルディスカッションの中で、松田邦紀 前駐ウクライナ日本国大使は、ウクライナの強みとして、高い技術力や英語力、女性の社会進出率の高さを挙げ、日本の製造業の進出、IT分野での協業、農産物輸出振興における日本の技術協力等への期待を示しました。 

テーブルに座っている人々のグループ
Photo: UNDP Tokyo

田中克 ウクライナ財務大臣アドバイザーからは、汚職の結果としてマネーロンダリングや送金が生じることに触れ、銀行やATMなどの送金の要所を対象とした汚職対策の努力を継続してきたことが紹介されました。そのうえで、ロシア侵攻の中でも銀行システムは停止しておらず、IT化も進展していることを踏まえ、汚職の是正さえ達成できれば、日本企業がウクライナでビジネスを展開する際の障壁は少ないとの見解が強調されました。 

高橋渉 デロイト・ポーランド・ウクライナジャパンデスク代表からは、ウクライナ中西部では活発な経済活動が続いているものの、日本企業は、ウクライナ市場へのリスクへの懸念や、規制対応の難しさ、情報の不足、地理的な距離の遠さなどの制約を受けており、信頼できる現地パートナーの選定が進出の鍵であると説明がなされました。 

テチアナ・コロトカ ウクライナビジネスオンブズマン副代表は、これまで行われた提言の多く(92%)が実施されるなど、汚職対策に着実な進展があると強調しました。労働人口の少なさや、ビジネスマネジメントおよび物流の問題など取り組むべき課題は多々あるものの、ウクライナは戦後世界一の建設需要があることが予想されることから、環境・エネルギー効率の高い技術を持つ日本企業への期待が表明されました。 

からは、民間企業がウクライナで活動するインセンティブをオレーナ・ウルス UNDPウクライナ事務所民主的ガバナンスチームリーダー高める必要があるとの認識の下、Diiaアプリの開発・普及をはじめ、DXを進めてきたことが紹介されました。Diiaはビジネスプラットフォーム機能を有し、ビジネスの機会やアドバイスを提供しているほか、ウクライナでのビジネスに関するトレーニングが利用可能なアプリケーションです。 

質疑応答では、ウクライナにおける汚職の認識の高さの理由、信頼できる現地パートナーの選定、ビジネスで紛争が起きた場合の解決策についての活発な議論を通じて、関係省庁、民間企業、日本、ウクライナなど、それぞれの立場からの知見が交換され、ウクライナの汚職対策とビジネス機会に対する関心の高さを改めて認識する良い機会となりました。 

最後に、ハジアリッチ秀子 UNDP駐日代表から、ウクライナでは、UNDPのスタッフ約420人が、昼夜を問わず職務に邁進していることが紹介され、それを支える日本からの支援に感謝の意が述べられました。そして、今後も日本政府、民間企業、市民社会からの理解のもと、人間の安全保障に資する協力を続けていくことへの決意を述べ、イベントを締めくくりました。 


JETROによるプレスリリース 

汚職対策がカギ、ウクライナビジネス展開を探るシンポジウム、ジェトロなどが開催