アフリカの経済構造改革に向けた展望

UNDPアフリカ局チーフエコノミストが登壇した、国連大学主催の対話シリーズでは、アフリカの経済構造改革に焦点を当て、持続可能な未来に向けた展望が議論されました。

2023年9月12日

国連大学にて、討論を行う白波瀬氏(左)とレイモンド(右)

Photo: UNDP Regional Bureau for Africa

近年、メディアや政界において、「アフリカの台頭」と言われるように、アフリカ大陸に対する見方が大きく変わりました。ガバナンスの向上、人口動態の変化、国内イノベーションのデジタル技術による推進、多様なパートナーシップなど、アフリカは多くの要素を備えているように見受けられます。特に、G7広島サミットでは、グローバル・サウスの関与が特に注目されました。

しかし、最近の世界的な危機、例えば新型コロナウイルス感染症のパンデミック、気候変動の悪影響、地政学的な緊張などは、アフリカ大陸の長年にわたる発展への努力に影を落とし、将来への不透明感を高めています。これらの危機は確かに混乱をもたらすものですが、同時に創造力と連帯の機会でもあります。新型コロナウイルス感染症パンデミックの厳しい状況の中で、アフリカは回復力、革新、連帯の象徴となりました。

現在、アフリカの国々と人々は、援助に依存せず、より繁栄し、団結した未来を再び想像する機会を手にしています。公正で持続可能な未来に向け、アフリカの構造的な経済変革にはすでに基盤が整っています。アフリカは、アフリカ域内貿易の拡大、急増する有能な若者の人口、アフリカ全域で進行中のデジタル革命など、新たな機会を提供しています。

今夏、国連大学が主催した「BIG IDEAS: SDGsに関する対話シリーズ」で、国連開発計画(UNDP)アフリカ局のチーフエコノミストであるレイモンド・ギルピンと国連大学の白波瀬佐和子上級副学長が、「21世紀を取り戻す:アフリカの経済構造改革」をテーマに、より公正で持続可能で強靭な未来を描くアフリカの経済構造転換の展望について議論しました。

「アフリカは自然災害や天然資源価格の変動に対して非常に脆弱であり、経済構造の再構築が急務であります。また、アフリカ固有の特徴と背景を理解する必要があり、この変革の際には「東アジアの成功モデル」だけが参考になるわけではありません。」と、ギルピンは冒頭のプレゼンテーションで、アフリカ経済の現状と経済構造の再構築の重要性について強調しました。

また、UNDPの今後の役割について、デジタル化、戦略的イノベーション、開発資金という3つの基盤となる要素を中心に据えた戦略計画2022-2025に言及し、UNDPは、知識、政策助言、人的資本開発への投資を通じて、構造的な経済発展を促進する役割を果たすことができると強調しました。

プレゼンを行うギルピン

Photo: UNDP Regional Bureau for Africa

その後、白波瀬氏は、サブサハラ・アフリカ地域への送金が増加している現状に触れました。これに対し、ギルピンは、これらの資金が他国や大陸に住むアフリカの人々からのものであることを説明し、これらの資金を開発に活用するための金融商品の必要性を強調しました。

続いて白波瀬氏は、アフリカの開発モデルと「東アジアの虎」の開発モデルの違いについて、工業化のタイミングを中心に掘り下げました。ギルピンは、グローバル市場へのアクセス方法、工業化の基盤、人的資本の開発など、両モデルにおける更なる違いを指摘した上で、厳格な規制、脆弱な制度、インフラの不備、持続的に低い識字率など、アフリカが直面する課題を強調しました。また、低付加価値から高付加価値への転換スキル重視の経済への移行の必要性を強調しました。

議論は、投資家や一般の人々のアフリカへの誘致に移り、「人々は、アフリカへのネガティブなイメージだけに囚われるのではなく、アフリカの問題に純粋な知的好奇心を持つべきです。」と、ギルピンは訴えました。更に、エネルギーと経済におけるアフリカの進化は、アフリカ大陸だけの問題ではなく、国際社会は世界的な問題として考えるべきだと指摘しました。

また、政策戦略も議論の中心となり、白波瀬氏は、喫緊の課題に取り組むと同時に、さまざまな分野で社会の変革を促進する必要性を強調しました。それに対して、ギルピンは、アフリカ経済の内在的なレジリエンスを認識することが、持続可能な繁栄のための環境を整える上で重要であることを強調しました。また、UNDPの戦略計画2022-2025は、その基盤の上に将来の政策が策定されることで、アフリカの社会と経済を持続的に発展させる役割を果たすことができると説明しました。

約100人のオンライン参加者と約60人の対面参加者の前で、ギルピンは最後に、アフリカ開発を推進し、国際援助への依存を減らすためには、ガバナンスと資源管理の改善、また変革的な資金調達方法が必要不可欠であると強調し、セッションは幕を閉じました。