
若者によるソーシャルイノベーションと社会起業を支援する国連開発計画(UNDP)とシティ・ファウンデーションのプログラム「Youth Co:Lab(ユース・コーラボ)」は、社会課題に挑戦したい、高校生から35歳までの若者に向けたSDGsビジネスコンテスト「ソーシャル・イノベーション・チャレンジ日本大会2024」を開催しました。
開催6年目のテーマは、「若者の力と共創が広げるイノベーション」。イノベーションをおこすために重要となる、多様なアクターを巻き込む「共創」と、その共創をけん引する若者の力に注目しました。最優秀賞や観客賞、イノベーションをおこす視点を重視する「ユース・イノベーター」賞に加え、CVC賞、UNHCR賞、アマゾン・ウェブサービス(AWS) 女性IT社会起業家賞が授与されました。(Demo Dayの動画はこちらから)
今回は国内外から約50件応募があり、書類審査の一次審査と、ピッチ動画による最終審査を経て、7組の受賞者が決定しました。 SDGs達成に焦点を当てたアイディアに加え、新しい視点や将来性を感じられる事業モデルを重視するとともに、以下の審査基準を軸として審査を行いました。
- 持続可能な開発目標(SDGs)への貢献度~社会問題解決へのインパクト
- 事業アイディア~イノベーション・革新性~
- 事業モデル~実現可能性、持続可能性~
- アントレプレナーとしての熱意・ビジョン
UNHCR賞については、以下の追加基準を満たす事業の中から選考。
- 難民の背景を持つ方が中心となって立ち上げた事業または難民問題の解決を目的とした事業(営利・非営利事業)
AWS女性IT社会起業家賞(AWS賞)については、以下の追加基準を満たすビジネスの中から選考。
- IT技術(デジタルサービス、クラウド、プラットフォーム等)を活用し、社会的課題を解決するビジネスモデルを有する女性主体の社会的ビジネス (社会的企業、社会的協同組合、自営事業)
- 設立から2年以上経過した社会的ビジネス
審査にあたっては、上記の総合的なバランスに加え、どれだけ説得力をもったわかりやすい伝え方ができているか、コミュニケーション力も重視しました。
ご参考まで、今回の応募者の特徴は以下のとおりでした。
- 年代の割合:18~29歳:66%、30代:18%、高校生:16%。
- 国外案件:50件中7件が国外対象の課題解決案。10件が国内外両方を対象。
- 社会課題・SDGsの分野:幅広い分野にわたり応募がありましたが、特に多かったのは、以下の4つの目標に貢献するアイディアでした:
- SDG 目標4:質の高い教育をみんなに
- SDG 目標3:すべての人に健康と福祉を(メンタルヘルスケア事業多)
- SDG 目標8:働きがいがいも、経済成長も
- SDG 目標10:人や国の不平等をなくそう
最優秀賞:「新興国の与信革命」( HAKKI AFRICA 小林嶺司氏)
独自のクレジットスコアリングシステムの開発を通じ、金融アクセスの無かった方々へ商用中古車のマイクロファイナンスを行っています。
評価点:現地の課題解決に対し、テクノロジーと信用スコアリングを用いたアイデアの斬新性を評価。またケニアでの実績をもとに海外進出を目指すにあたり、潜在的なインパクトの大きさに期待。
スケーラビリティ(汎用性)賞および観客賞:「すべての人に水の持続性を」
(AQVANA Nur Adlin Binti Abu Bakar )
人口増加と急速な気候変動に直面する昨今、増加する水需要は、ますます憂慮すべき問題となっています。IoTとバイオテクノロジーの活用を通じて、地理上の位置や経済的な地位に関係なく、すべての人に高品質の水と栄養価の高い食料への持続可能なアクセスを提供することを目指します。
評価点: 水と食という重要な課題に対し、革新的な技術開発をとおして取り組んでいる点を評価。グローバル市場進出への期待も大きい。
ユース・イノベーター賞 および CVC賞: 「ゾウと人間の軋轢を解消する養蜂事業」
( Wildlife Ventures Ltd. 米田耕太郎氏)
ケニアで発生しているゾウと人間の軋轢を、ゾウが本能的にハチを怖がることに着目し、養蜂での解決を目指しています。
評価点:現地で現地のものを使って課題解決 というシンプルでありながらよく考えられたユニークなビジネスモデル。プレゼンテーションの良さも評価。
CVC賞:「次世代型EdTech:子どもの多様な価値観を育むオンライン対話型サービスYOMY! 」
(YOMY! 安田莉子氏)
3-8歳の子どもたちに、米国発の対話型絵本時間「ダイアロジック・リーディング」を届けるオンラインスクール。絵本を通じて子どもの想像力を育み、忙しい親の子育て支援も実現する次世代型EdTechサービス。
評価点:ビジネスモデルのシンプルさと、テクノロジーとヒューマンインターフェースのバランス の良さ、読み聞かせ事業にジェンダー平等の推進などが組み込まれている3点を評価。
UNHCR賞:「揺らぐ世界に希望を照らす、難⺠のレジリエンス×クリエイティブ」
(Refeart Inc. 島倉愛理氏)
2秒に1人が故郷を追われている現代。HOPYは、難民の背景をもつデザイナーやアーティストと協働し、彼・彼女らが不条理の中で培ったレジリエンスをクリエイティブを通じて社会に接続するクリエイティブレーベルです。
評価点:本事業の難民の背景を持つ方のクリエイティビティを商品化する点だけでなく、難民に対する一般的なイメージをネガティブからポジティブに変えるという価値創造の部分を特に評価。
アマゾン・ウェブサービス(AWS) 女性IT社会起業家賞:「新興国の女性・若者への IT 人材育成 “IMANI Hacking”」
(株式会社 Darajapan 角田弥央氏)
IT・ソフトスキルの習得を通じた新興国の若者・女性特化型人材育成・就職支援事業 IMANI Hacking Bootcampは、各国文化・生活環境からプログラムを設計。実践的な開発環境を提供し、リスキリングと雇用機会で貧困脱却を支援する。
評価点:女性の能力強化事業をタンザニア現地のニーズを把握し、パートナシップを構築して実践している点を評価。世界的にもIT人材が必要になっていることから、日本や他国への人材派遣などの可能性にも期待。
AWS女性IT社会起業家賞:「子どものコミュニケーション支援システム「キミノミカタ」」
(株式会社Guardian プーザー・ケイトリン・エリン氏)
kimino micata® は、子どものためのコミュニケーションツールである。オンラインアンケートで虐待や学校でのいじめの兆候を早期につかみ、子どものSOSをアラートによって学校内の特定のチームや養護教諭、外部の相談機関(予め登録した機関)へ伝える。子どもが対面では言いにくいことも伝えやすい工夫をしている。
評価点:いじめ・虐待は社会に残る非常に重要な課題であると同時に、昨今のさらに複雑化する子どもの環境に対して、子どもを主体に考えられたビジネスモデルを評価。