アフリカでの若手起業家の活躍を促進する官民連携

2023年8月に経済同友会とUNDPが共同で主催した「日アフリカ・ユース起業家フォーラム」は、社会経済の変革を促進する上で重要な若手起業家の支援について議論する場となりました。

2023年10月13日

パネルディスカッションの様子

Photo: UNDP Regional Bureau for Africa

アフリカの若者のエンパワーメントとビジネス環境の強化をサポートするための官民連携は、日本にとって欠かせないものと考えられており、現在、アフリカの若者支援プログラムが多数実施されています。しかし、アフリカと日本の双方が社会経済の変革を加速させるためには、一層の前進が求められています。

UNDPはこのような流れに同調し、「YouthConnekt」という多角的なプログラムへの支援を通じ、若者のエンパワーメントを促進する環境構築に取り組んできました。さらに、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)において若者が不可欠な役割を果たすことを提唱し、若手起業家支援や、若者のビジネス支援に関する様々なプログラムとの連携を推進しています。

このような取り組みの一環として、2023年8月、経済同友会とUNDPの共催による「日アフリカ・ユース起業家フォーラム」が開催されました。このフォーラムは、セクターを超えた協力関係を刺激し、社会経済変革における若手起業家のリーダーシップを支援するための対話の促進、及び2025年に開催されるTICAD 9での議論の形成に繋げることを目指し実施されました。

冒頭、経済同友会副代表幹事で日本たばこ産業株式会社取締役会長の岩井睦雄氏は、「TICADが30周年を迎え、日本とアフリカのパートナーシップがますます深まっています。日本のビジネスリーダーはアフリカの潜在力をますます認識するようになっており、今後はアフリカの発展を理解し、更なるパートナーシップの強化と、熱意と進取の気性に富んだ若手起業家たちに焦点を合わせることが不可欠です。」と述べました。

UNDP総裁補兼アフリカ局長のアフナ・エザコンワは、UNDPと経済同友会がこれまで様々な協力の機会を模索してきた経緯に触れ、今回のイベントは若者を支援するための対話を活性化し、日本企業との協力を奨励し、2025年のTICAD9までに具体的な成果を達成することを目指して開催されたことを述べました。

「アフリカの経済変革に関する議論への若者の参加は極めて重要であり、さらに女性と若者の関与は後付けではなく、プロセスに統合されるべきです。 UNDPは、AfCFTAの活用や知識・技術の移転を戦略的に推進しており、日本の若者にアフリカに関する啓発をどのように行えるかについて一緒に考えましょう。」と、エザコンワは述べました。

続くパネルディスカッションでは、アフリカの起業家、著名な政治家、ビジネス界と学界の代表者が参加しました。立命館大学国際関係学部教授の白戸圭一氏がモデレーターを務め、自身の経験と統計情報をもとに議論をリードしました。

衆議院議員の鈴木貴子氏は、国会議員を含む個人がアフリカ各国を訪問することの重要性を強調し、「経験豊富な個人の専門知識とノウハウは極めて重要ですが、情熱を持った個人とビジネスパートナーを結びつける必要があります。アフリカと日本の将来の関係を考える際、慈善の概念は時代遅れです。TICADは進化を遂げており、私たちが追求すべきはパートナーシップの強化です。」と強調しました。

東京大学執行役、副学長の染谷隆夫氏は、東京大学において起業家育成の重要度が高まっていることを受け、「この変化は、従来の官僚的なキャリア追求の道とは異なり、優秀な人材が起業を目指すようになってきたことを示しています。 昨年、同大学では46のスタートアップ企業が立ち上がりましたが、この数を10倍に増やすことを目指しており、特にグローバル化を促進するためのグローバル・サウスとの連携、ディープ・テック、そして社会起業家のエンパワーメントを重要な焦点分野としています。」と述べました。

豊田通商株式会社執行幹部、アフリカ本部新規事業開発COOの木村和昌氏は、「アフリカでのスタートアップへの投資において、自社の強みと現地のニーズが一致する分野に焦点を当てることが重要です。成功事例を通じて、スタートアップが自社から顧客へのサービスを提供するために不可欠な存在となります。また、豊田通商はアフリカ事業を積極的に推進するために、アフリカ専門部署を設立するなど組織の変更を行い、安全性やコンプライアンスへの素早い対応を重視しています。」と強調しました。

経済同友会グローバルサウス・アフリカ委員会委員長、シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役及びand Capital代表取締役である渋澤健氏は、「日本からアフリカへの投資が限られているため、アフリカ市場は未開拓の機会であり、爆発的な成長の可能性があると10年前に認識しました。経済同友会は、アフリカの開発に寄与する日本企業からの投資促進に向け、近年特別なファンドを立ち上げました。このファンドは初の取り組みであり、今後30年にわたり、若い世代が中心的な役割を果たすのを支援することを目指しています。また、新しい時代における若者の適応力を認識し、アフリカにおける協力とパートナーシップを重視しています。」と述べました。

パネルディスカッションには、日本の大学で学ぶアフリカ出身の起業家も参加しました。

ABEイニシアティブ(African Business Education Initiative for Youth)の奨学生で、九州大学大学院法学研究院修士課程に在籍するブソラ・ペレズ=フォラヤン氏は、アフリカ54カ国の多様な強みを強調し、ナイジェリアでのイノベーションハブでCEOを務めた経験から、能力開発トレーニングプログラムの重要性を訴えました。「パートナーシップの重要性を強調する際には、アフリカのスタートアップ企業と日本企業との連携を強化し、共同での意思決定や議論が不可欠です。アフリカでは活発な起業家精神とスタートアップのエコシステムが成長しているため、投資の拡大に期待しています。」と述べました。

東京農工大学で太陽エネルギー工学専攻博士後期課程に在籍する学生であり、アイシャ・コンサルティングのCOO、セネガル発のHinomi221のCEOであるアイサトゥ  ガイ ンブップ氏は、「日本企業とアフリカの若手起業家を結びつけ、投資機会の相互探索、リソースの共有、Win-Winのパートナーシップを促進するプラットフォームが必要です。さらに、日本の昭和時代の歴史を振り返ることで得られるインスピレーションは、アフリカ各国特有のニーズを理解するのに役立ちます。」と述べました。

また、アフリカのスタートアップ企業が直面する主な課題は投資ではなく、知識のギャップであることも強調されました。渋澤氏は「現在、日本を代表する企業の多くが150年前にはスタートアップ企業であり、ビジネスにおける失敗は特別なことではありませんでした。ビジネスにおける失敗を受け入れ、スタートアップの失敗を前提に資金を配分するよう政策を調整することが重要です。」と指摘しました。

集合写真:(左から右)岩井睦雄氏 • 白戸圭一氏、木村和昌氏、アイサトゥ・ガイ・ンブップ氏、アフナ・エザコンワ、ブソラ・ペレズ・フォラヤン氏、鈴木貴子氏、渋澤健氏、染谷隆夫氏

Photo: UNDP Regional Bureau for Africa