アフリカの発展における優先課題 - 公正なエネルギー転換

アフリカの発展において、公正なエネルギー転換は最も優先されるべき課題です。2023年8月、国連開発計画(UNDP)総裁補兼アフリカ地域局長のアフナ・エザコンワは、国連大学の対談シリーズに招かれ、チリツィ・マルワラ学長と「公正なるエネルギー転換を解き明かす: アフリカの開発における優先課題」をテーマに、様々なトピックに触れながら対談しました。

2023年10月30日
Photo: UNDP Regional Bureau for Africa

エネルギーへのアクセス問題とUNDPの戦略

冒頭、エザコンワは、アフリカの6億人が電気を利用できず、9億7000万人が清潔な調理用燃料を利用できていないことを強調しました。   国際エネルギー機関(IEA)によると、アフリカで安価なエネルギーへの普遍的アクセスを達成するには、2030年までに毎年9,000万人へのアクセスを提供する必要があるとされており、 エザコンワは次のように述べました。「UNDPの戦略的提案には、6つの分野(構造転換、エネルギー転換、若者のエンパワーメント、平和と安全保障、気候変動、天然資源ガバナンス)が含まれ、これらの分野は、単なる対処法ではなく、課題の根本原因に取り組むことを目的としています。」

また、「エネルギー転換が "公正 "であるとは、エンドユーザーが比較的容易にアクセスできる範囲にあり、彼らの需要を満たすのに十分で信頼できるエネルギー供給であることを意味します」とエザコンワは続けました。

アフリカの天然資源と経済的課題

「アフリカにとって重要な課題の一つは、広大な天然資源を活用して繁栄を実現することです。」エザコンワは、アフリカ大陸が過去の成長を経験したものの、主に採掘業に依存しており、実質的な工業化や製造業の発展はほとんど進んでいないことを指摘しました。また、アフリカが原材料を輸出し、高いコストで完成品を輸入しているという付加価値の不足が、貧困の持続化につながっていると述べました。

技術の進歩と生産性

次に、アフリカの現在の生産性水準について、エザコンワは、「優先されるべきは生産の強化であり、そうすることで必然的に雇用機会が創出されます。アフリカ域内貿易の可能性は、生産性の向上と製造業によって増幅され、大きな成長の展望をもたらします。技術の進歩は、労働力の代替として機能するのではなく、アフリカの発展を支援するイネーブラーとしての役割を果たすべきです。」と述べました。

また、再生可能エネルギー技術の進歩と再生可能エネルギーのコスト低下に触れ、特にアフリカ大陸が世界の温室効果ガス排出削減に大きく貢献できる潜在的な能力を考慮すると、アフリカの再生可能エネルギーコストを支援するための国際的な協力の必要性を強調しました。「アフリカには豊富な太陽光発電や水力発電の資源がありますが、これらを有効に活用するには財政支援、能力開発、最新技術への投資が不可欠です。」

Photo: UNDP Regional Bureau for Africa

若者のエンパワーメント

続いてエザコンワは、若者のエンパワーメントの重要性を強調し、アフリカ大陸の若年層とその潜在能力を活用する必要性を訴えました。また、より多くの若手プロフェッショナルが持続可能性と開発に焦点を当て、その分野で活躍すべきであると提唱しました。次世代の積極的な参加が地球の将来にとって極めて重要であり、持続可能な未来に欠かせない要素であることを強調しました。

ガバナンス

アフリカの豊富な天然資源を管理することの重要性も議論され、これが国内・国外レベルの両方で、アフリカが「公正なエネルギー転換」に向けて前進するための大きな障壁となっていると、エザコンワは指摘しました。アフリカ大陸は、国内紛争、地政学的緊張など、様々な課題に取り組む必要があり、透明性と説明責任が伴う効果的なガバナンスが、持続可能な成長にとって極めて重要であると説明しました。

「アフリカでは、非立憲的な統治や不安定なガバナンスが良く取り上げられますが、これらがアフリカ全体を代表しているわけではないと理解することが重要です。UNDPの報告書「兵士と市民: アフリカにおける軍事クーデターと民主的再生の必要性」によると、アフリカの人々はより民主的な統治機構を強く望み、独裁政治に反対しています。ガバナンスに対する国民の熱意は、無関心を示すものではなく、真の利害関係者の関与を求めるものであります。」と強調しました。

化石燃料とエネルギー源の多様化

化石燃料の問題について、エザコンワは、石油資源の豊富な地域における紛争など、化石燃料に関連する数値化されないコストを強調しました。「再生可能エネルギーをより多くの人々に普及させるには、その包括的な可能性をより強調する必要があります。アフリカに対する投資は無数の機会があり、リスクプロファイルはアフリカ大陸によって異なります。」と述べました。

市民参加とコミュニティ・ダイアログ 

「特に資源が豊富な地域では、意思決定プロセスに草の根から参加することが重要です。」地域の関係者が自分たちの懸念やビジョンを明確にするためのプラットフォームとしてのコミュニティ対話は、効果的なガバナンスにとって極めて重要であるとエザコンワは強調しました。

また、UNDPのTICADへの30年間の協力についての質問に対し、エザコンワは「TICADの立ち上げ以来、UNDPは共催者として、また強力なパートナーとして積極的に協力してきました。TICADは、世界的な混乱期にアフリカの発展を支援するために設立され、SDGsなどのグローバルな開発目標と調和しながら、多くの関係者を結集し、アフリカの成長を促進してきました。TICADは成熟するにつれ、民間セクターの参加を奨励し、アフリカを援助の受益者から有望な投資先として位置づける方向へ戦略的にシフトしてきました」と述べました。

エザコンワ(左)と チリツィ・マルワラ国連大学学長(右)

Photo: UNDP Regional Bureau for Africa