ブラジルのアマゾン森林地域が気候変動とのたたかいを先導している方法とは
2024年11月11日
アマゾンは燃えています。数百万ヘクタールもの熱帯雨林や湿地、サバンナは火災の餌食になっています。この影響は森林を遥かに超える範囲まで広がり、生活が失われ、命は危険にさらされ、煙はサンパウロやブエノスアイレスなどの都市まで届いています。この環境災害は、気候変動による気温の上昇、エルニーニョ現象による干魃、環境破壊とたたかうための資源不足など、様々な要素が危険に結びつくことによって引き起こされています。
ブラジルのアマゾン熱帯雨林は多くの炭素を貯蔵し、生物多様性を涵養し、地球の気候を統制しています。しかし、火災や森林破壊、それらに引き起こされる健康危機が加速するにつれて、ブラジルの地域は資源不足もある中、困難に直面しています。
アマゾン各州は、気候変動に適応し、その影響を緩和するための課題を乗り越えるための代替案を模索しています。困難に直面しながらも、被害を軽減するだけでなく、保全計画を強化し社会経済的開発を促進するための、大胆で革新的な解決策をもって、状況に立ち向かっています。
以下で、三つの解決策を紹介します。
1. カーボンファイナンスへの道を示す
パラー州での取り組みが良い例です。来年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)のホストとして、パラーは気候変動に対するたたかいを先導しています。同州は最近、「森林ファイナンスの促進による排出削減のための連合 (Lower Emissions by Accelerating Forest finance Coalition: 略称 LEAF)」と、森林破壊・劣化に対するプロジェクトによる排出削減のために、180百万米ドルという画期的な協定を結びました。先住民族や地域コミュニティーが政策決定の最前線に立ちます。
これは、森林破壊と森林劣化による温室効果ガス排出の削減(REDD+)イニシアチブの一環であり、REDD+環境優良基準(The REDD+ Environmental Excellence Standard; TREES)など、世界で最も厳格な環境基準に沿ったものです。
カーボンファイナンスは、森林を守るためのプログラムによって排出削減をするための金融的インセンティブを、パラーのような州に対して提供する上で、中心的な役割を果たします。LEAF連合のような協定を通じて、パラーは森林破壊や森林劣化の測定可能な削減を実現するための資金を受け取っています。これは、州が気候目標を達成するだけでなく、持続可能な産業に投資し、長期的な経済・環境的利益を確保する助けになります。ブラジルのアマゾン地域の他の州も同様のカーボンファイナンスの機会を利用し、あるいはLEAFの準備を進めており、この資金調達がいかに大規模な気候変動対策を推進できるかを示しています。
パラー州は温室効果ガスの排出削減を目指すだけでなく、バイオエコノミーなど、森林を中心とした持続可能な産業の構築にも力を入れています。UNDPは、州知事の気候・森林タスクフォース(GCF Task Force)の下、自然保護団体 (The Nature Conservancy)とノルウェー政府の支援を受けて、森林破壊を削減し、 森林を基盤とした持続可能なバリューチェーンを構築するための同州の 「アマゾニア・ナウ」計画の策定を支援しました。重要な点は、パラー州は森林破壊の最大の要因の1つである牧畜にも取り組んでいるということです。パラー州知事は、2026年までにすべての牛肉のサプライチェーンを追跡可能にし、森林破壊を防止することを約束しました。
2. 政策形成の最前線に立つ先住民族と地域コミュニティー
こうした取り組みは、先住民族や地域コミュニティーのリーダーシップなしには成り立ちません。これらのコミュニティーは何世代にもわたってアマゾンを守ってきました。そして今、森林保護政策の意思決定者としての彼らの役割がようやく認められつつあります。アマゾンのいくつかの州は、先住民族の声を聞き、彼らが社会経済的・文化的発展に関わる政策を積極的に立案できるよう、先住民族を中心とした事務局を設置しています。
集団的権利の尊重を重視しつつ、これらのコミュニティーはブラジルの森林保護の未来を形作っています。政府、先住民族、地域社会のリーダー、国際機関間のパートナーシップは、持続可能で包括的な解決策が可能であることを証明しています。
REDD+は、社会・環境保護を重視しつつ、政策や意思決定のプロセスに地域コミュニティーを取り込むことで彼らをエンパワーしました。
3. アカウンタビリティーを確保するためのデータの利用
アマゾンの森林破壊とのたたかいの中心には、環境破壊を追跡し、理解し、最終的に緩和するための重要なツールである、データがあります。ブラジルの国立宇宙研究所(INPE)、は、土地利用の変化を監視する上で重要な役割を数十年にわたり果たしています。特に、森林破壊のホットスポットや森林劣化、その他の土地利用の変化に関するリアルタイムデータを提供する衛星システムを通じて、その役割を担ってきました。このような情報は、環境執行のためだけでなく、地方レベルでも国家レベルでも、気候政策を形成するために不可欠です。
データは、カーボンファイナンスの基礎として、排出削減が起こっていることを証明するだけでなく、現地での戦略的決断の指針にもなります。森林破壊が起こっている場所の詳細な情報をもとに、アマゾン各州は、リスクの高いエリアの資源を重視しながら、より効果的な介入を行うことができます。また、彼らは森林回復や森林保護プロジェクトの成功を即時的にモニターし、それらの示唆をもとに戦略を調整することができます。例えば、衛生データは、地域コミュニティーが持続可能な土地利用の実践を適応しているか、もしくは、保護地域で不法伐採が続いているかどうかを暴くことができます。現在、UNDPの支援のもと、アマゾン各州は国際的なカーボンファイナンスの基準に則りながらこのデータを利用しており、彼らの排出削減が最高レベルのアカウンタビリティーを満たしていることを保証しています。
この取り組みは、ブラジルだけに限らず、地域と国が協働して努力することによる可能性を世界に示しています。アマゾン各州は、その戦略をブラジルの国家気候目標に統合することで、パリ協定の下での同国の公約に貢献し、同様の環境危機に直面している他の地域の規範となっています。
レジリエントな未来に向けた地球規模の努力
アマゾンで猛威を振るう森林火災は、気候変動対策の緊急性を痛感させます。しかし、ブラジルのアマゾン各州から生まれた革新的な戦略は、希望を与えてくれます。整合性の高い資金調達、先住民族や地域コミュニティーの知識と権利の深い尊重、データとアカウンタビリティーを組み合わせることで、これらの州は地球上で最も貴重な資源のひとつを保護する道を先導しています。
世界が注目する中、この、地域、国、そして国際的なパートナーの協力は、変革が可能であることを示しています。力を合わせれば、アマゾンのため、ブラジルのため、そして未来の世代のために、よりレジリエントな地球に投資することができるでしょう。