調査から導かれた提言には、金融アクセスの改善、新たな資金調達手段や仕組みの導入、雇用創出と賃金上昇のための戦略策定などが含まれます。
粘り強いウクライナの中小企業、回復に前向き: UNDPの調査結果
2024年2月22日
2024年2月20日、キーウ発 – ウクライナの中小零細企業(MSMEs)に対する戦争の影響について包括的に分析された国連開発計画(UNDP)の新たな調査の結果が発表され、この重要なセクターの回復力、課題、回復の見通しについて重要な考察が示されました。
この調査は、分析プラットフォームである経済復興センターとウクライナ経済発展貿易省とのパートナーシップにより実施されたもので、中小零細企業がウクライナ経済において果たす役割の大きさを強く表す結果となりました。こうした中小零細企業は同国のビジネスの99.98%を占め、全雇用の74%を提供しています。
主な調査結果は、2022年初めに操業を停止した中小零細企業は目覚ましい回復力を示し、2023年末までにその82%が部分的に企業活動を再開したというものです。
また、ウクライナの企業は2024年の見通しについて慎重ながらも楽観的であることがわかりましたが、主な懸念は今後も続く予測不可能な状況、需要の低さ、そして労働力不足にあります。こうした状況下にも拘わらず企業はこれ以上の人員削減を計画しておらず、これはさらなる景気回復の可能性があることを示しています。
各社はまた、未使用の生産能力を徐々に再稼動させる予定であり、需要が生じれば2024年に生産量を約50%増加させる用意があると述べました。2023年、各社の稼働率は徐々に回復し、加重平均稼働率は53.4%となりました。予測によれば、この加重平均稼働率は2024年には56%まで上昇することが見込まれます。
戦時中にも拘わらず企業は適応力を示しある程度の財務能力を維持していますが、予測不可能な環境のため追加融資を求めることをためらっていることがUNDPの調査で明らかになりました。ほぼ8割の企業が外資の誘致を考えておらず、代わりに国内融資に頼ることがほとんどです。こうした企業の事業開発戦略を3年間で実施するために必要な追加財源は、1社あたり平均950,000米ドルである一方、半数近くの企業は30,000~300,000米ドル水準の少額投資を必要としています。
ウクライナ東部と南部の企業は、西部の企業よりも1.5倍高い損失に直面していますが、2024年の回復に対して明るい見通しを維持しています。しかしながら、起業家の2人に1人が政府の援助がなければ事業は存続できないと答えています。また、借入、雇用プログラム、減税、助成金が企業活動の存続に不可欠であると回答した他、4分の1の企業がこれらの恩恵を受けており、継続的な支援に関心を示しています。
UNDPウクライナ事務所常駐代表のヤコ・シリアーズは、今後の支援と復興努力の指針となる本調査結果の重要性を次のように強調します。
「この調査は、前例のない困難に直面したウクライナの企業の粘り強さと適応力を浮き彫りにしただけでなく、支援が必要な重要分野にも光を当てています。ウクライナ経済の基盤である中小零細企業の回復力と成長を強化するために、国内外の支援を結集することが不可欠です。」
本調査の主な提言は、金融アクセスの改善、新たな融資手段や仕組みの導入、人的資本と労働市場の柔軟性の強化、雇用創出と賃金上昇に向けた戦略策定などにわたります。さらに、戦争の影響を受けた人々を支援し、テクノロジーへの投資や輸出機会の開発を通じて中小零細企業の競争力を強化するための的確な取り組みも求めています。
本調査で得られた知見と提言は、ウクライナの中小零細企業のための政策と支援メカニズムを形成し、紛争後の復興と成長を促進する上で重要な役割を果たすことが期待されます。
報告書のダウンロードは以下リンクから