人道支援組織の代表者たちは、ガザに「安全地帯」を設けるという一方的な提案には参加せず ― 機関間常設委員会(IASC)の代表者たちによる声明
2023年11月21日
ニューヨーク/ジュネーブ/ローマ – 人道支援の主導者として、私たちの立場は明確です。すべての当事者の合意なしに、また、安全やその他の必要不可欠なニーズを満たすための基本的な条件が整い、その実施を監督する体制が確立されない限り、私たちはガザにおけるいかなる「安全地帯」の設置に参加しません。
現状では、ガザに「安全地帯」を一方的に設置する提案は、多数の死者を出すなど、民間人に被害をもたらす危険があり、断固として受け入れられません。しかるべき条件が整わない場合、激しい敵対行為の中で民間人をそのような地帯に集中させることは、攻撃やさらなる被害のリスクを高めることになりかねません。一方的に宣言される、または、武力によって強制される「安全地帯」は、本当の意味で安全な場所であるとはいえません。
場所の所在に関係なく、民間人の安全を確保し、必要な民間人への迅速かつ安全で円滑な人道的アクセスを促進するなど、彼らの必要不可欠なニーズを満たすために常に注意を払うという当事者たちの義務が、「安全地帯」をめぐる議論によって逸脱されることがあってはなりません。
激しい敵対行為と民生インフラの大規模な破壊により、多くの民間人が避難を強いられています。現在、ガザでは160万人近くが避難民となっています。ガザの市民は、食料、水、シェルター、衛生、保健、支援、安全など、生存に必要なものを手に入れなくてはいけません。また、人道支援組織は、支援を届け、基本的なサービスを提供するために、十分な量の燃料を入手しなくてはなりません。私たちは、民間人やその他の被保護者がどこにいようと、その支援と保護に引き続き全力を尽くします。人道支援従事者は、国際人道法の定める要件に従い、その任務を遂行するために不可欠な移動の自由が担保されなければなりません。
私たちが代表するどの人道支援組織も、ガザで想定される「安全地帯」あるいは「人道地帯」に避難民が到着する準備に関与していません。
「安全地帯」とは、民間人を安全に保護し、敵対行為から守ることを目的とした一時的な地帯のことです。「安全地帯」にいるすべての避難民のために、以下の条件が整っていなければなりません:
- 当事者が、当該地帯およびその周辺での敵対行為を自制し、かつ当該地帯の文民的性質を尊重することに合意する。
- 食料、水、シェルター、衛生、保健、安全など、生存に必要な支援を提供する。
- 避難者が自由に移動し、自主的に可能な限り早く居住地に戻ることを認める。
これらの基本的な条件を満たさない場合、国際人道法および国際人権法の違反となる可能性があります。
私たち[1]はまた、苦しみを和らげ、人道支援活動を円滑に進めるための人道的停戦と、すべての人質の解放を改めて要求します。
本声明の要点は、国連緊急援助調整官が2023年11月15日に発表した声明でも明確にされています。
署名者:
- Mr. Martin Griffiths, Emergency Relief Coordinator and Under-Secretary-General for Humanitarian Affairs (OCHA)
- Ms. Sofia Sprechmann Sineiro, Secretary General, CARE International
- Ms. Jane Backhurst, Chair, ICVA Board (Christian Aid)
- Mr. Jamie Munn, Executive Director, International Council of Voluntary Agencies (ICVA)
- Ms. Anne Goddard, Chief Executive Officer and President a.i., InterAction
- Ms. Amy E. Pope, Director General, International Organization for Migration (IOM)
- Ms. Tjada D’Oyen McKenna, Chief Executive Officer, Mercy Corps
- Mr. Volker Türk, United Nations High Commissioner for Human Rights (OHCHR)
- Ms. Janti Soeripto, President and Chief Executive Officer, Save the Children
- Ms. Paula Gaviria Betancur, United Nations Special Rapporteur on the Human Rights of Internally Displaced Persons (SR on HR of IDPs)
- Mr. Achim Steiner, Administrator, United Nations Development Programme (UNDP)
- Dr. Natalia Kanem, Executive Director, United Nations Population Fund (UNFPA)
- Mr. Filippo Grandi, United Nations High Commissioner for Refugees (UNHCR)
- Ms. Maimunah Mohd Sharif, Executive Director, United Nations Human Settlement Programme (UN-Habitat)
- Ms. Catherine Russell, Executive Director, United Nations Children's Fund (UNICEF)
- Ms. Sima Bahous, Under-Secretary-General and Executive Director, UN Women
- Ms. Cindy McCain, Executive Director, World Food Programme (WFP)
- Dr. Tedros Adhanom Ghebreyesus, Director-General, World Health Organization (WHO)
[1] 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、この声明を全面的に支持しています。