2024年2月に開催された日・ウクライナ経済復興推進会議では、日本の民間セクターによるウクライナの復旧・復興への関与について、機運の高まりが示されました。同会議以降、日・ウクライナのビジネス協力は、日本のウクライナ経済復興への関与の主要なテーマの一つとなっています。 

2023年7月に東京で開催されたG7法務大臣会合では、「東京宣言」が採択され、「ウクライナ汚職対策タスクフォース（ACT for Ukraine）」が日本のリードの下で設立されました。そして、2024年11月6日と7日の二日間にわたって、日本政府はG7および国際パートナーと共に汚職対策に関する問題を議論するため、ACT for Ukraineの東京会合を開催します。この機会を捉え、ACT for Ukraineのパートナー機関であるUNDPは、法務省及び日本貿易振興機構（JETRO）との共催にて、公開サイドイベントを開催し、ウクライナにおけるビジネスの機会と課題について日ウクライナ間の幅広い関係者間で議論し、今後のウクライナにおける日本によるビジネス展開の可能性を探る機会となることを目的とします。

背景

ロシアによる全面侵攻を受けつつも、ウクライナは大規模な消費者市場に加え、優秀な人材と豊富な天然資源を有しています。ウクライナ政府は、これらの潜在的な経済力を活用するため、企業統治や経済改革に関する多くの法律の制定を進めており、ウクライナを国際的な基準や規制に準拠させる取り組みを推進しています。ウクライナの復旧・復興には、政府、国際金融機関（IFIs）、民間セクターから数千億ドルに及ぶ資金が集まると予想されています。しかし、司法における腐敗は依然として、国際ビジネスに影響を与えうる重要な課題の一つです。 

ウクライナにおけるビジネス機会は、特に農業、消費財、技術分野にあるとされています。ウクライナは農業大国であり、ロシアによる妨害にもかかわらず、世界最大の穀物輸出国の一つです。ウクライナには、ITサービスやソフトウェア研究開発分野における専門家が多く、昨年中にもロシアによる全面侵攻の中、技術分野の成長を遂げました。 

潜在的なビジネス機会がある一方、ウクライナへの海外直接投資（FDI）は依然として低いままとなっています。ロシアによる意図的なウクライナの民間インフラの破壊、ウクライナ領土の大規模な占拠、前線での激しい戦闘、ウクライナ全土にわたる民間人や民間インフラに対するミサイルやドローン攻撃、侵攻による労働力の不足、不発弾による汚染、その他の戦争による生態的影響は、新規および既存の投資家にとって課題となっています。しかし、ウクライナ領土の大部分は前線から離れています。 

外国投資家によるリスク認識はウクライナの国内外で違い、数千万ドルの新たな投資を行っている既存の外国投資家がいる一方で、新規投資家による投資は限られています。戦前からの汚職や司法制度に対する不信などの問題は依然として残っており、ウクライナの戦時通貨管理や固定為替レート制度の導入はさらなる複雑さをもたらしています。しかし、復旧・復興は、特にリスク許容度の高い早期参入投資家にとって、重要なビジネス機会となります。 

戦時下において、企業は単なる中立的な存在ではありません。ウクライナでは、地元企業も国際企業も戦争の影響に対応するために、「ビジネスと人権」に基づいた取り組みを進めてきました。ウクライナは、ビジネス運営に関する諸課題に対処する上で、ビジネス関連の協会、ビジネス・オンブズマン協議会、その他の組織を通じた、人権デューデリジェンス、ビジネスにおける誠実性、ベストプラクティスの強化に関する教訓を得ています。