日本とUNDP、水セクター開発パートナー調整評議会と連携によりカザフスタンの洪水対策強化に向けた新たな取り組みを開始
2025年3月10日

カザフスタン・アスタナ発 – 日本政府と国連開発計画(UNDP)は、カザフスタンにおける洪水への強靭性強化とダムの安全性向上を目的とし、200万ドル(3.02億円相当)にて実施される新たな共同イニシアチブを開始するための合意に署名しました。本プロジェクトは、カザフスタン共和国水資源・灌漑省(MWRI)と協力し、UNDPが共同議長を務める「カザフスタン水セクター開発パートナー調整評議会」との連携により進められます。
本イニシアチブは、水関連インフラ、特にダムを国家洪水制御計画に統合することを目的としています。具体的には、ダム洪水・安全管理の新たな概念を定義し、この概念を用いて最大2つのダムに対する多機能評価を実施するとともに、1つのダムにおいて監視の実施と・早期警報通信及び自動化を含む監視システムを導入します。これにより、ダムの完全性、モニタリング、監視、貯水池の運用を、将来的に全国規模に拡大できるよう、全国の水情報システムに統合する予定です。本プロジェクトの主要な要素の1つは、ダム監視システムの最新化であり、これは洪水早期警報および備えのシステムと連携されます。本プロジェクトはデジタル化の重要性を強調し、データのデジタル化と高度なハードウェア・ソフトウェアによる自動化を通じて、強固な早期警報システムを構築し、洪水対策を強化することに重点を置いています。デジタル技術は、本イニシアチブの中核をなし、ダムの監視、運用、警備において重要な役割を果たし、運用の効率化とダムの安全性向上に寄与します。
「気候リスクの高まりを背景に、即時の対応が最優先課題となっています。カザフスタンの水インフラは、国家の洪水耐性において重要な役割を果たしていますが、多くのダムは現在の気候課題に対応する設計がなされていません。本イニシアチブは、水に関する国家行動計画と一致しており、ダムの安全性と洪水対策に関する最も差し迫った問題に対応するものです」とヌルジャン・ヌルジギトフ カザフスタン共和国水資源・灌漑大臣 は述べました。
国連の推計によると、2030年までに世界では年間約560件の災害が発生し、そのうち約75%が気候変動に関連する極端な気象現象であるとされています。洪水、干ばつ、熱波などの災害により、何百万もの人々が影響を受けており、カザフスタンも例外ではありません。昨年、カザフスタンでは前例のない洪水が発生しました。凍結した地盤、急激な気温上昇、降雨、さらに大量の積雪が重なり、カザフスタン北部および西部で極端な水位上昇を引き起こしました。多くの河川で過去最高の水位を記録し、洪水防御施設がこの極端な水量に対応できず、集落や農業地帯を含む広範囲が浸水しました。
カザフスタンが極端な気象現象に対してますます脆弱になっていることを踏まえ、水インフラの安全性と効率性を確保することが国家の最優先事項となっています。カザフスタンには400以上の貯水池があり、ダムは地表水の約83%を管理しています。これらのダムの多くは、洪水緩和、水供給、場合によっては水力発電など、複数の機能を担っており、これらの競合する需要をバランスよく管理するために高度な水管理戦略が求められています。

「このプロジェクトは、カザフスタンの防災およびリスク削減の能力を強化し、より高い防災力の構築に寄与するとともに、最終的には持続可能な経済発展にも貢献するものです」と飯島泰雅 在カザフスタン日本国特命全権大使 は述べます。
しかしながら、これらのダムの多くは50年以上前にソビエト時代の設計基準で建設されており、気候変動リスクが考慮されていません。カザフスタンにある1,502の水利構造物のうち、537は緊急の改修が必要であり、304は現代的な警報システムが欠如しているため、公衆の安全に即時の脅威をもたらしています。こうしたリスクを認識し、UNDPはカザフスタン政府が国際的な洪水警報ネットワークと統合可能な国家洪水予測・モデリングシステムを開発する支援を行いました。

署名式典において、カタジナ・ヴァヴィエルニア UNDPカザフスタン常駐代表は、本イニシアチブがカザフスタンの国家の気候公約と一致していることを強調しました。「洪水はカザフスタンが直面する最も壊滅的な気候リスクの1つであり、何千人もの人々や経済の安定に影響を及ぼします。インフラと災害の事前準備の強化を通じた洪水リスクの軽減は、防災および水セクターの優先事項を直接支援するものです。UNDPは、その専門知識を活用し、デジタルソリューションやイノベーションを駆使して、持続可能な水管理の実践を支援することを誇りに思います。」
本イニシアチブはまた、地域開発戦略への気候適応の統合に関するUNDPの継続的な取り組みとも補完し合い、全国的に一貫性のある包括的なレジリエンス構築アプローチを確立するものです。
背景: 昨年3月から4月にかけて、カザフスタン北西部を中心に大規模な洪水被害が発生した際、カザフスタン政府は、全国17州のうち10州に対して非常事態宣言を発令したほか、約12万人の住民に対する緊急支援・救出活動等を行いました。UNDPは、日本政府がカザフスタン政府からの要請にて、同年7月JICA調査団を現地に派遣した際、ダム被害の状況や修復ニーズのアセスメントに関する協力を行いました。 本協力は、カザフスタン政府の要請やJICA調査団による調査結果を踏まえて、UNDPと日本政府の連携にて形成されたものです。
Photo: UNDP Kazakhstan/Batyr Aubakirov