早期警報システムが中央アジアの人命を救う

2024年11月20日
銃を構える男
Photo: UNDP Uzbekistan

気候変動は世界中で、より高頻度で甚大な異常気象を引き起こし、コミュニティを脆弱にし、危機に晒しています。中央アジアでは、多雨と氷河の融解が土砂崩れや土石流を引き起こし、インフラや道路を破壊し、農業を妨げ、清潔な水の供給を脅かし、悲惨な形で命が失われています。気温上昇や長引く洪水によって食料安全保障や公共衛生に影響を与え、その地域の人々の生活をより困難で不安定なものにしています。 

早期警報システムは迫り来る自然災害についてコミュニティに警告し、準備・対応するために不可欠な時間を提供するようにデザインされた重要なツールです。効果的な早期警報システムは命や生活を守り、経済損失を減らすことができます。中央アジアが気候変動による災害の増大する頻度と深刻さに対処する上で、早期警報システムが重要であることは言うまでもありません。 

しかしながら、中央アジアの国々が早期警報システムを大規模に実行するためには、技術的知識と資源が必要です。幸いにも、日本はそれらの国々にとって心強い味方です。UNDPと日本が早期警報システムを推進し、この地域のレジリエンス強化支援をする上で協働した4つの事例を紹介します。 

  1. 気象インフラの近代化 

ウズベキスタンのフェルガナ渓谷では、UNDPと日本が農業気象観測ネットワークの改善を支援しました。具体的には、55の新たな気象観測所を設け、データ処理能力の強化、さらに現地の気象予報士への幅広いトレーニングを実施しました。この支援は、脆弱や農村コミュニティへの気象情報サービスを強化し、農家や農村世帯がタイムリーで正確な気象情報を得られるようになり、彼らが受ける異常気象からの影響を減らすことができます。 

  1. 金融へのアクセス 

カザフスタンでは、UNDPと日本が、農業分野の中小企業が低炭素事業を実施し、レジリエンスを高める助けをするための5つの解決策を開発しました。これらの解決策には、太陽光発電や効率的な灌漑手法などのグリーン技術が含れます。また、補助金、融資、担保保証などを通じた開発機関や金融機関からの支援を受けながら、再生可能エネルギーや節水設備に対する融資を受けるためのガイダンスも提供しています。 

  1. 政策や制度的枠組みの強化 

UNDPは日本と共に、キルギス共和国にて、「キルギス共和国における緊急事態を包括的に監視・予測する統一システムに関する国家構想(National Concept for the Unified System of Comprehensive Monitoring and Forecasting of Emergency Situations of the Kyrgyz Republic)」を策定し、緊急時モニタリングと予報のための制度的枠組みを強化する支援を行ないました。加えて、機械学習を利用した新たな情報システムが既存のシステムに統合され、緊急事態を監視し予測する制度的な能力を高めています。 

  1. コミュニティ教育への投資 

タジキスタンでは、UNDPと日本が、河岸侵食や土石流、土砂崩れの被害を受けやすいテバレイ川流域に住むコミュニティのレジリエンスを高めるために協働しています。現在、意識向上を目的としたセッションや訓練、教育プログラムなどを通して、現地コミュニティは災害リスク低減やレジリエンス強化戦略に関する重要な知識を身につけています。 

雪の中に佇んでいる人
帽子をかぶった男性

このように、中央アジアでの早期警報システムの発展に成功した事例はありますが、地域の住民の命や生活を守るための効果を脅かす課題が一貫して残っています。 

システムの実行能力を確保するために必要なことを4つ紹介します。 

  1. 早期警報システムを持続可能で効果的なものにするためには、メンテナンスと更新が必要 

早期警報システムがあらゆる状況に臨機応変に対応できるものであり続けることが重要です。これは早期警報システムの技術や手法を定期的に更新・アップグレードすることを意味します。機械学習やデータ分析、環境モニタリングの強化などの先端技術を組み込むことは警報の正確性と即時性を改善させるために重要な役割を果たします。現在実行されているこれらの取り組みは、早期警報システムが効果的にリスクを緩和し、異常気象からコミュニティを守ることを保証するために非常に重要です。 

  1. 早期警報システムを支援する制度的枠組みは、新たな課題に対処し、新たな機会を活用して進化する必要 

異なる政府機関やNGO、コミュニティが関与しているにも関わらず連携が取れていない場合、制度上の問題が発生します。その結果、災害対応において、責任の重複や責任範囲のギャップ、非効率が起こることがあります。ステークホルダー間の協働を促進し、現場のニーズに対応するための組織的枠組みが効果的な介入において不可欠です。 

  1. 早期警報システムのための十分な金融資源の確保を優先 

多くの組織は予算の制約や優先事項の競合に直面しており、これは、災害への準備、緩和、対応のための取り組みに十分な資金を配置することを難しくしています。これらの金融制限は、多くの場合、包括的戦略の実行を妨げ、早期警報システム強化を目指すプロジェクトの規模を制限してしまいます。しかし、早期警報システムは、それらが異常気象から命や生活を守ることで投資に対して最大10倍のリターンをもたらすことができるという意味で、合理的な投資なのです。 

  1. 効果的な介入のために、コミュニティの参画が不可欠 

現地の人々がモニタリングや危機対応活動に積極的に参加するとき、彼らはよりレジリエントになり、危機に対処するより良い準備ができます。コミュニティに必要なツールや技術、訓練、プロトコルを提供することは、災害リスク低減のための取り組みを自分ごととして捉え、責任を持つという意識を現地の人々に与えることができます。コミュニティによる持続的な努力がなければ、レジリエンス向上のための取り組みは意味をなさず、介入の長期的な効果を下げてしまいます。 

早期警報システムは、特に脆弱な遠隔のコミュニティにとって、異常気象が人道危機につながることを防ぐための最も効果的で確実な方法です。中央アジアの国々はその強化のために努力していますが、いまだに多くの発展途上国が強固な早期警報システムを持っていません。私たちが将来を見据えるとき、こうしたシステムの開発・配備において、特に脆弱な地域での持続的な国際協力と投資が、地球上のすべての人を守るという目標を達成するための鍵となるものです。 


背景

早期警報システムへの日本の継続的な支援と専門技術は非常に貴重です。日本は研究と技術革新、そして世界各国へのリアルタイムデータの提供に専念しており、ハザードを予測し、より適切に対応することができるよう支援しています。先進的な早期警報システムとその技術、実行に対して継続的な投資を行うことで、日本は世界をより安全でよりレジリエントな場所にする手助けをしています。 

日本は、気候危機が全人類にとっての脅威であると考え、UNDPと協力し、各国が気候変動対策を加速するよう支援しています。2021年、国連開発計画(UNDP)は、NDCの目標を具体的な行動に移すことを目的とした「気候の約束 (Climate Promise)」の新たなフェーズ「 From Pledge to Impact 」を開始しました。日本はこのフェーズ最大の支援国であり、ドイツ、スウェーデン、欧州連合(EU)、スペイン、イタリアといった長年のパートナーや、英国、ベルギー、アイスランド、ポルトガルといった新たなパートナーとともに、こうした取り組みを加速させています。