なぜプラスチックのリサイクルを増やさないのか
2024年11月28日
多くの国において、プラスチック製品に付いている三つの矢のマークが国際的なリサイクルのシンボルとして認識されています。しかし、現実にはこのマークがある全てのプラスチックを簡単にリサイクルできる訳ではありません。リサイクル技術は数十年前から確立されていますが、実際にはほとんどのプラスチックゴミはゴミ廃棄場や埋め立て地に積み上げられて放置されます。
数百万トンものプラスチックゴミがゴミ廃棄場や自然環境に捨てられているのが現状で、なぜリサイクル率が低いのか多くの人が疑問に思うことでしょう。
今回は、リサイクルの過程、そしてその限界について解説しつつ、複雑なプラスチックのリサイクルに対して多くある疑問の中からいくつか答えていこうと思います。
どのくらいのプラスチックがリサイクルされているの?
リサイクル率は場所やプラスチックの種類、設備力によって異なります。科学者たちの試算によると、世界で出たプラスチックゴミのうち、たった9%のみがリサイクルされています。プラスチックゴミのほとんど(実に79%)がゴミ廃棄場か自然環境に投棄され、12%は焼却されています。
なぜプラスチックのリサイクルを増やせないの?
基本的に、ほとんどのプラスチック物質はリサイクルできます。しかし、実際にはリサイクルを妨げるさまざまな要因があります。
- 汚染:プラスチックゴミは、しばしばラベルや食べ残し、その他の物質によって汚染されています。例えば、リサイクルできないものをリサイクルボックスに入れることで、ゴミ廃棄経路を汚染し、リサイクル設備にダメージを与えてしまうことさえあります。これは、リサイクルされた製品の質を下げ、仕分け作業を複雑化する可能性があります。ゴミ廃棄経路が汚染されすぎている場合、そこを通過したゴミは全くリサイクルできないばかりか、全てがゴミ廃棄場に送られることになります。
- 有害物質:プラスチックは、柔軟性や色、撥水性などの特定の性質を保つために、化学添加物の複雑な混合を含んでいます。こうした物質の多くは人間にとって有害です。有害物質を含むプラスチック製品のリサイクルは、そこで働く人や地域社会、エンドユーザーに長期的な健康被害を生じさせかねません。
- 収益性:プラスチックには非常に多くの種類があり、それぞれが、その構造や色、融解点などに影響する異なった性質を持っています。これらの物質を一緒に処理することはできないので、ごみ収集や仕分け、処理は、より複雑で費用が高くなります。例えば、最も使われているプラスチックの一つであるポリエチレンテレフタレート(PET)は、100%リサイクル可能とされていますが、緑のペットボトルは透明なペットボトルと一緒にはリサイクルできません。
プラスチックは何回リサイクルできるの?
プラスチックはリサイクルされる度に、質が落ちてしまいます。異なる物質がリサイクル処理の間に混ざるため、有害物質が蓄積されることもあります。したがって、ほとんどのプラスチックは、ゴミ廃棄場に行くか、焼却される前に1回か2回リサイクルされるのみです。今日のリサイクルのほとんどは、ゴミの排出を防いでいるのではなく、先延ばしにしているだけなのです。
プラスチックはどのようにリサイクルされているの?
リサイクルの過程は場所や設備、その他の要因によって異なりますが、一般的に以下のようなステップで行われます。
- 収集:消費者がリサイクルボックスにプラスチックゴミを入れる
- 分別:プラスチックを他のゴミから分け、種類ごとに分別する
- クリーニング:汚染物を取り除くためにプラスチックを洗って乾燥させる
- 再処理:プラスチックをフレーク状に粉砕し、加熱し、新しいペレットにプレスする
- 製造:ペレットが融解され、新たなプラスチック製品として成形される。
リサイクルとダウンサイクルの違いは何?
リサイクルは使用済みのプラスチックを新しい製品に加工することです。例えば、ペットボトルから新たなPETペレットを作ることなどです。
ダウンサイクルは、プラスチックを、元の物質と比べると質の低い製品に変えることを意味します。これはリサイクルの過程での分子構造の変化によるもので、高いパフォーマンスが求められる製品への使用を難しくしています。ダウンサイクルの例は、ペットボトルを質の低いポリエステル繊維の服に変えることなどです。今日リサイクルとされているほとんどの過程は、実はダウンサイクルです。
私たちには何ができるの?
リサイクルに頼ることはプラスチック問題の解決にはつながりません。しかしプラスチックのライフサイクルの中で、プラスチック問題に貢献し、人々の健康を守ることができる多くの方法を見出すことができます。
- 必要のないプラスチックの使用を避ける。
- 不要な使い捨てプラスチックの製造、消費をやめる。
- 地域でゼロ・ウェイストへの移行を勧める。
- プラスチックに使用される化学物質の透明性と追跡可能性を確立する。
- プラスチック製品を無害化する:プラスチックの有害物質の使用を段階的に廃止する。
- 有害物質が含まれているプラスチックのリサイクルをやめる。
- プラスチック素材の簡素化と調和。
- 製造者の責任を拡大させる
プラスチック問題解決に向けて、どのように貢献できるの?
自身が出すプラスチックゴミを減らすだけでなく、以下のように貢献できます。
- 政府の代表が責任を持って、野心的な国際プラスチック協定のために活動するように呼びかける。
- プラスチック製造を減らし、循環モデルを実現し、ゴミ処理を向上させ、汚染者に責任を持たせるための政策や法律の実行を主張し、支援する。
- プラスチック汚染を減らすためのイニシアチブを支援し、ビジネスが行動するよう促す。
- 自分自身がプラスチック汚染を減らすための提唱者となり、人々の行動を変えるように促す。
次は?
第5回国連環境総会において、プラスチックのライフサイクル全体に対処するためのプラスチック汚染に関する法的拘束力のある条約の交渉開始が175の国々の間で合意されました。
この歴史的な合意は、私たちの生産・消費・廃棄の仕方を変えるために、必要な責任と透明性を生み出すことを助けることができます。
交渉は、2024年に予定されている2回目の交渉において中間点を迎えています。世界のプラスチック条約交渉に関するガイドもぜひチェックしてください。