日本とUNDPがシリアにおける農業生産性と生計の向上に向け協力

2024年3月4日

署名式の様子:志野光子・国際連合日本政府代表部大使兼次席常駐代表(写真右)とアブダラ・アル・ダルダリ国際連合開発計画(UNDP)総裁補兼アラブ局長(写真左)

Photo: UNDP

2024年2月29日、志野光子・国際連合日本政府代表部大使兼次席常駐代表とアブダラ・アル・ダルダリ国連開発計画(UNDP)総裁補兼アラブ局長は、無償資金協力「長期化した危機及び地震の影響を受けた農業及び生計の改善計画(供与額8.83億円)」を行うため、協力に関する書簡に署名しました。

本プロジェクトでは2年間にわたり、水資源管理とエネルギーソリューションの導入を通じて生活に必要不可欠なサービスを改善するとともに、気候変動に対応する能力を強化します。これらの活動を通じて、ダマスカス郊外県とアレッポ県郊外に住む約6万4050人の人々の強靭性を強化し、貴重な資源を保護するとともに、生計と生活を直接改善することを目指しています。また、これらの脆弱なコミュニティに住む14万人以上の人々が間接的に本プロジェクトの恩恵を受けることが期待されます。

三宅浩史・在シリア日本国大使館臨時代理大使は「日本はシリアにおいて、特に強靭性に重点をおき継続的に人道支援を実施してきました。食料安全保障と気候変動への対応は、人々の生活に最も必要とされるものです。本プロジェクトはこれらの問題に取り組む上で重要な貢献と認識しています」と述べました。

下水道網や埋め立てごみ処理場の復旧、可動式廃水処理ユニットの設置を通じ、人々の生活に必要不可欠なサービスへのアクセスを強化します。可動式廃水処理ユニットは、非伝統的な水源の提供や、水損失を減らすための灌漑用水路の修復を通じて、水資源管理の改善に貢献します。廃水処理ユニットとそれに関連する下水・農業ネットワークの復旧により、対象地域に住む約35,000人が恩恵を受ける予定です。また、固形廃棄物の収集と埋立地の復旧事業は約25,000人が裨益対象です。更にこの復旧工事により、550人の雇用機会と、固形廃棄物の収集作業による現金収入を生み出します。

スディプト・ムカジーUNDPシリア常駐代表は、「日本はUNDPにとって常に戦略的で重要なパートナーであり、食糧安全保障が脅かされているシリアではなおさらです。危機と地震の影響に加え、気候変動と不安定な水の供給により、農民が家族を養うのに十分な食料を栽培し、必要な収入を十分に得ることが難しくなっています。日本が支援するプロジェクトは、最も脆弱な人々の強靭性を高め、この地域における気候変動への適応と緩和の取り組みに寄与するものです」と述べ、UNDPを通じた日本政府の貢献に感謝し、人道支援と復興における日本政府の極めて重要な役割を強調しました。

復旧工事を補完するため、300人の農民と技術者(40%が女性)が、水の利用効率や灌漑方法など、持続可能で強靭性のある農業技術の適用について研修を受けます。250人には農業資材が提供され、残りの50人(主に女性が世帯主の家庭)は研修や事業立ち上げなどのバリューチェーン支援を受けます。

シリアは、水資源の深刻な課題に取り組み続けています。1ヘクタールあたりに必要な水量は、年間約8,000~10,000立方メートルと推定されています(注1)。農業部門はシリア経済、特に農村社会で極めて重要な役割を担っており、農村人口の80%が生計を農業に依存しています(注2)。シリアでは危機発生後、水資源部門の効率とパフォーマンスは悪化しました。2023年2月の地震は状況を更に悪化させ、都市部と農村部、特に灌漑インフラと水資源に甚大な被害をもたらしました。


(注1)General Commission for Scientific Agriculture Research in Syria 
(注2)Humanitarian Needs Overview 2023, OCHA